第240回
イラク人より悲惨かも...

イラクで武装勢力に拘束された中国人男性7人は、
翌日には解放されました。
中国はイラクに軍隊を出していませんし、
そもそも中国はアメリカが国連の決議を経ずに
イラクを攻撃する事に反対していたのですから、
中国人だと分かれば解放されてしかるべしです。

しかし、解放されても彼らが大変な状況にある事には、
変わりがありません。
一文無しで言葉も習慣も分からない国に放り出され、
生きていく為に仕事をするにしても、
言葉が話せない人間に条件の良い仕事がある訳もなく、
給料は生きて行くのがやっとしかもらえません。
イラクではいまだにテロや戦闘が続いており、
いつ巻き添えを食って死ぬかもしれない危険な状況なのに、
イラクから脱出するお金もありません。
絶望的な状況です。

残された家族も悲惨です。
イラクに出稼ぎに行くから、と言って、
手数料を借りる保証人になった家族の所には、
借金取りが押し掛けます。
働き手を失った家族は、
前にも増して貧乏な生活をしていますので、
数万元(数十万円)もの大金など返せるあてもありません。

彼らの状況は、
もしかしたらイラク人より悲惨かもしれません。
NGOはイラク人ではなくて、
福建人を助けてあげた方が良いかもしれません。

イラクで武装勢力に捕まった中国人は、
騙された出稼ぎ労働者。
一方、同じイラクで捕まった日本人は、
NGOとジャーナリスト。
こう比較すると、日本は中国に比べて、
まだまだ断然裕福な国である、という事が分かります。

そんな詐欺丸出しのうまい話に騙される方が悪い、
と言われればそれまでなのですが、
騙されてイラクに行き、
生活の為にイラクで働き、
お金が無くてイラクからの脱出もままならない人たちに、
「自己責任だ」とか「救出費用を負担しろ」とか
言う気にはなれません。

しかし、自分の意志でイラクに行き、
自国政府の渡航禁止勧告が出ているのも知っており、
イラクから脱出するお金も持っている人たちに、
「勧告を無視してイラク国内に留まるなら、
自己責任で行動してくれ」と言うのは、
至極当然の事だと、私は思うのです。


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