第345回
「中国のユダヤ人」

「温州商人」とは、
浙江省温州市を本拠地とする企業経営者の人たちです。
彼ら「温州商人」が「中国一商魂がたくましい人たち」
と言われる様になるまでには、
大変な苦労があった様です。

時代は新中国建国当時まで遡ります。
国民党の蒋介石は、
共産党に破れて台湾に逃れた後も、
中国大陸への再上陸を
虎視眈々と狙っていました。

その際の資金源となったのが、
「温州商人」など、同氏の故郷である
浙江省の企業家たちでした。

国民党の中国大陸への再上陸を恐れた中国共産党は、
蒋介石の資金源を断つ為、
浙江省の発展を極力抑えました。

中央政府から言わば「干された」形となった
温州など浙江省の各都市は、
中央政府に依存しない形での独自の経済発展を成し遂げ、
一時期は中国共産党から
「資本主義を見るなら温州に行け」
と非難された事もありました。

「温州商人」が「中国のユダヤ人」と呼ばれるのは、
単に商魂がたくましい、という理由だけではなく、
「虐げられて、強くなった」という
共通点がある事も、その理由の一つなのかもしれません。

「温州商人」は山西省の石炭に目を付ける前には、
中国各地の不動産を買い漁っていました。
「温州商人」は、値上がり狙いの投機目的で
大量の不動産を買い付けるので、
昨今の不動産バブルや景気過熱の一因を作った、
とも言われています。

彼らの活動は中国国内に止まりません。
スペインに靴を売りまくったり、
パリで本家であるユダヤ人の会社を買収したり、
世界各地で活躍しています。
最近では、「北朝鮮は経済改革が進む」
と読んでいるらしく、
平壌にもたくさんの「温州商人」が
進出している様です。

エネルギッシュ!ダイナミック!グローバル!
「温州商人」は、全盛期の日本の
「SOGO SHOSHA」を彷彿とさせます。

中国の金持ちはだいたい、
「利権現金化装置」として、
官僚や政治家にくっついて歩き、
そのおこぼれで財を成しています。

そんな中で、政治権力に頼らず、
自らの才覚だけで財を成し、
国内経済のみならず、
外国の経済にまで影響を与える様になった
「温州商人」の活躍には、
一種のすがすがしさを感じます。


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