第469回
「神舟6号」と「靖国参拝」

先週月曜日、中国の有人宇宙船「神舟6号」が
5日間の宇宙飛行を終え、
内モンゴル自治区に着陸しました。

中国の有人宇宙飛行は、
2003年10月の「神舟5号」に次いで2回目となります。
「神舟5号」は、1人の宇宙飛行士が
21時間の宇宙飛行をしただけだったのに対し、
今回の「神舟6号」は宇宙飛行士2人が
5日間もの宇宙飛行をし、
その間に100以上にのぼる宇宙空間での実験をしました。

中国は、2007年前後に打ち上げ予定の「神舟7号」で、
宇宙飛行士による船外活動を、
2009-2012年には宇宙船のドッキングを実現し、
最終的には独自の恒久的な宇宙ステーション建設を
目標としているそうです。

アメリカ、ロシアに次ぐ宇宙大国の座を
確固たるものにしつつある中国。
一方で、無人ロケットでさえ
満足に打ち上げられない日本。

「そんな日本が、どうして中国に
ODA(政府開発援助)を供与し続けなければならないのか。
税金使って他の国のお世話してる場合か!」。
そんな声が日本国民の間から聞こえてきそうです。
お説ごもっとも。

今回の「神舟6号」による宇宙飛行の成功は、
中国の国威発揚に大いに役立ちました。

「強い中国」、「優れた中国」の演出は、
中国人民を「やっぱり中国人に生まれてよかった」、
「やっぱり中国共産党に任せといてよかった」
という気持ちにさせ、
中国国内、延いては、香港、台湾を含めた中華圏の
中国共産党に対する求心力を高める効果をもたらします。

これは先日開通した、世界一高いところを走る鉄道
「青蔵鉄道」の建設もそうですし、
北京オリンピックや上海万博もそうです。
逆に言うと、こういう演出をし続けないと、
民衆の気持ちを引き付けていられないほど、
中国共産党に対する求心力は落ちてしまっているのです。

そんな国威発揚の大事な日に、
国民的な盛り上がりに水を注すような形で、
小泉首相が靖国神社に参拝したので、
中国政府はいつになく
激しく怒っているのではないでしょうか。
先週月曜日は靖国神社の秋季例大祭の初日、
ということなのですが、
なにも、「神舟6号」帰還の日に参拝しなくても...。

ま、靖国問題に限らず、教科書問題、
尖閣諸島問題、石油ガス田問題などで、
日本がヒール(悪役)を演じ続けてくれれば、
逆の意味で中国人民が団結してくれますので、
中国政府にとっては、
ありがたい、といえば、ありがたいのですが...。


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