第472回
「ドナウの真珠」

先日、私、ハンドキャリーのお仕事で、
匈牙利(しゅんやりー、ハンガリー)の
布達佩斯(ぶーだーぺいすー、ブダペスト)に
行ってまいりました。

北京からブダペストは、
意外なことに直行便があります。
海南航空とマレーヴ・ハンガリー航空の
コードシェア便で、昨年8月に就航しました。

なんで国内線中心の中堅航空会社・海南航空が、
いきなりブダペストに直行便?、
と思って調べてみたところ、
海南航空の筆頭株主はハンガリー出身の
著名投資家、ジョージ・ソロス氏でした。
なるほど、そういうことですか。

北京からブダペストは飛行機で10時間。
今回はブダペストに9時間滞在して、
そのまま帰りの便に乗り、
また10時間かけて北京に戻ってきました。
所要時間29時間、0泊2日の強行軍です。

体力的には非常にきつかったですが、
滞在時間が短かったおかげで、
北京とブダペストには
6時間の時差があるにもかかわらず、
時差ボケにはならずに済みました。

ハンガリー、というと、東欧の旧共産圏ですので、
私は勝手に「抑圧されていて重苦しく暗い」
というイメージを持っていたのですが、
実際に行ってみると、道行く人々の表情も明るく、
そんな雰囲気は微塵も感じられませんでした。

ハンガリーの人たちからすれば
「現役バリバリの共産圏から来たおまえが、何を言う!」
という感じですな。
失礼いたしました。

ブダペストは「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街です。
昨年行ったコペンハーゲン同様、
昔の建物がほとんどそのまま残されており、
街全体が歴史的な建造物の博物館のようです。

すばらしいと思ったのは、そうした歴史的な建造物を、
だいじにだいじに保存するだけではなく、
ちゃんと普通の建物として使っているところです。
そうしたハンガリーの人たちの文化に対する態度が、
ブダペストを今でも「ドナウの真珠」と呼ぶにふさわしい、
美しい景観の街に保ちつづけているんですね。

一方の北京では、
今日も昔ながらの胡同(ふーとん、路地)が壊され、
その上に近代的なビルが建設されています。
もちろん、一部の胡同は、
歴史的建造物として保存されるのでしょうが、
ブダペストから帰ってくると、
中国はあたかも、経済発展と引き換えに
悪魔に魂を売り渡してしまったかように見えます。

ハンガリーと中国、どちらのやり方が正しいのか。
それは、我々の子孫が
21世紀初頭を振り返って判断することになります。


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