第497回
中国に来て実感、GSM方式の便利さ

日本の携帯電話は、
一部の携帯電話会社のものを除いて、
中国に持ってきても使えません。

これは、中国の携帯電話が
アジア、ヨーロッパなどで広く普及している
GSM方式を採用しているのに対して、
日本の携帯電話は
日本独自の通信方式を採用しているからです。

GSM方式の携帯電話は
海外出張する際に非常に便利です。
香港でも、コペンハーゲンでも、ブダペストでも、
目的地の空港に到着して、
中国から持っていった自分の携帯電話の電源を入れると、
何の手続もなしに、自動的に
その国の携帯電話キャリアの名前が画面に表示され、
すぐに通話ができるようになります。

おまけに、電源を入れて少し経つと、
中国移動通信から、その国の警察、救急、中国大使館など、
緊急連絡先の電話番号が、
中国語のショートメッセージで送られてきます。
どんな技術を使っているのかわかりませんが、
心細い異国の地では、感動的なサービスです。

日本では海外に行く人のために、
海外用携帯電話をレンタルする、
という商売があるようですが、
携帯電話の番号は当然、
自分のものを使うことはできません。
その点、中国の携帯電話は、
GSM方式を採用している国であれば、
自分の携帯電話番号をそのまま使って、
中国国内と同じように
電話を受けたり、かけたりすることができるのです。

GSM方式が優れているもう一つの点は、
携帯電話本体と携帯電話番号が別売りであることです。

GSM方式では、携帯電話番号を買うと
SIMカードというICカードをくれます。
このSIMカードを携帯電話本体にセットして、
通話を行うのです。

このSIMカードは、
どのメーカーの携帯電話でも使えますので、
携帯電話本体を何度買い換えても、
SIMカードを入れ替えれば、
ずっと同じ携帯電話番号を使うことができます。

このSIMカード方式は、
中国の携帯電話買い替え需要の増大に
大きく貢献しているのではないでしょうか。

日本でも来年の11月からは、携帯電話の
「番号ポータビリティー(持ち運び)制度」が
導入されるようですが、
GSM方式は最初からそれができたことを考えると、
日本の方式はあまりに遅れている、
と言わざるを得ません。

現在、全世界でGSM方式を採用していないのは、
日本と北米ぐらいだそうです。
日本とアメリカは技術先進国としての誇りがあり、
ヨーロッパで発明されたGSM方式を受け入れることは
そのプライドが許さなかったのかもしれません。

しかし、中国に来て、
GSM方式の便利さを実感してしまうと、
そうした両国のプライドが自国民に与えた経済的損失は、
計り知れないものだったのではないだろうか、
と思えてしまうのです。


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