第507回
そんな仕事をして一生を終えるのはいやですなぁ

中国にある外国の報道機関や企業の電話が
盗聴されているかどうか、というのは、
本当のところはわかりません。
しかし、盗聴されているとすれば、
盗聴している回線の数だけ聞いている人がいる、
ということです。

せっかく大学で猛勉強して外国語を習得し、
晴れて国家公務員になったのに、
出てくるかどうか分からない問題発言を待ちながら、
一日中、電話を盗聴して、
「うちのスタッフが言うこと聞かなくってさぁ」とか、
「毎日中華であきちゃったよ」とか、
そんな愚痴を延々と聞かされる。

そんな仕事をして一生を終えるのはいやですなぁ。

そして、通信手段が発達した現在、
電話だけを盗聴していても意味がありません。
e-mail、FAX、無線など、
あらゆる本国への発信を傍受する必要があります。
となると、中国政府には、それらを傍受して、
その傍受した内容に問題がなるかないかを
チェックする人たちもいる、ということです。

そんな仕事をして一生を終えるのもいやですなぁ。

しかし、外国の報道機関が、
そうした当局の検閲の網をうまくくぐって、
首尾よく本国に記事を送ったとしても、
その記事が新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどで報道されて、
それを見たり聞いたりした中国政府が
「内容に問題あり」と判断すれば、
最悪、その報道機関から記者証を取り上げて、
中国国内での全ての取材活動をできないようにする、
なんていうこともあり得ます。

ということは、中国政府には、一日中、
世界各国の新聞、雑誌、テレビ、ラジオを
見たり、聞いたりして、
問題のある内容が報道されていないか
チェックしている人たちもいる、ということです。

盗聴係や傍受係の人たちよりは、
ちょっとはましですが、
それでも、やっぱり、
そんな仕事をして一生を終えるのはいやですなぁ。

外国の報道機関は、記者証を取り上げられて、
取材活動ができなくなれば、商売あがったりですから、
どうしても中国政府の意向に沿った報道を
せざるを得なくなります。
日本で報道される中国関係のニュースの内容が、
各社とも均一なのは、
そうした背景があるためだと思われます。

中国に派遣されている
外国の報道機関の特派員の人たちは、
メシを食っていくために、
ジャーナリスト魂をグッと押さえ込んで、
中国政府が発表する「大本営発表」を
そのまま本国で報道するしかないのです。


←前回記事へ

2006年1月18日(水)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ