第534回
「共産党高級幹部専用病棟」

こうした農村医療重視政策の一方で、
北京の大きな病院に行くと、いまだに
「高干医療部(がおがんいーりゃおぶー)」と呼ばれる、
「共産党高級幹部専用病棟」が一般病棟とは別にあります。

一般庶民は一般病棟で「挂号(ぐあはお)」
と呼ばれる受付を済ませたあと、
どんなに病気でつらくても、
名前を呼ばれるまで
永遠と待っていなければなりません。

あまりにも長く待たせられるので、
「もうつらくて、これ以上待てない」
という人のために、
朝早く病院に行って受付を済ませ、
その受付札を高値で売る
「挂号屋」までいると聞きます。

これに対し、「高干医療部」は
ほとんど待たずに診察してもらえますし、
病棟も明るく清潔です。
医者や看護婦の数も多く、対応も丁寧で、
そのゆったりとした和やかな雰囲気は、
一般病棟の殺伐としたそれとは明らかに違います。

こんなのを一般庶民が見たら
「オレたちがこんなに苦しんでいるのに、
なんでおまえらだけいい目にあってるんだ!」
と不満に思うのが当たり前です。

以前、私が丸紅の本社で働いていた時、
経費節減のため、出張で飛行機に乗る場合は、
エコノミーの格安航空券を買うよう、
上司から厳しく言われていました。
しかし、そう言っている上司自身は、
ビジネスのノーマル航空券で出張していました。

「経費節減のためには、
課長もエコノミーの格安航空券で
出張すべきではないですか」と指摘したところ、
「おまえらと一緒にするな!」と言われ、
大変悔しい思いをしたことを、
今も強烈に覚えています。

苦労して偉くなったのだから、
ビジネスクラスで出張したり、
会社の経費で飲み食いしたりしたい、
という気持ちはわかります。
しかし、部下には
乾いた雑巾を絞るような
経費節減を強いておきながら、
自分は経費使い放題、
ということでは部下はついて来ません。

中国共産党は、医療体制の整備に
多額の国家予算を投入するのも結構なのですが、
民衆の怒りを和らげるためには、
まずは高級幹部や党員の優遇や既得権益を廃止して、
「率先垂範」で国を率いていく姿勢を見せることが、
必要なのではないでしょうか。


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2006年3月22日(水)

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