第551回
大連に未来はあるのか?

私、先日、出張で
大連(だーりぇん)に行ってきました。

大連はよいところです。
空は青いし、空気はきれいだし、
人は少ないし、街もきれいだし。
黄砂と工事の砂ぼこりと自動車の排気ガスと
喧騒とクラクションが渦巻く街・北京から来た
私からしてみれば、そこはまるで天国のようです。

更に、大連は親日の人が多く、
日本語を話せる人も北京よりずっと多いです。
大連市の税収の約60%が、
進出している日系企業が納める企業所得税である、
ということからも推測できるように、
大連と北京では、日本人の位置付けが全く違うのです。

大連への日系企業進出開始は、
20年以上前にさかのぼります。
大連の開発区ができたのが1984年、
1ドル=79円までいった急激な円高の
端緒となったプラザ合意が1985年。
気候が穏やかで、日本語を話せる人材が多く、
労働力も安価な大連は、
円高のあおりで日本国内での生産では
採算が合わなくなってしまった日本の製造業の
絶好の進出先でした。

しかし、それから20年の月日が経ち、
状況はがらりと変わってしまいました。
高度経済成長により、中国は「世界の工場」から、
「地球上に残された最大且つ最後の巨大マーケット」
への変貌を遂げつつあり、
為替は元高の方向に、
労働者の賃金は上昇の方向に進んでいます。

元高と賃金の上昇は、
輸出基地としての大連の競争力を
どんどん削いでいきます。

輸出がだめなら、その分国内販売を増やす、と言っても、
人口が600万人しか(600万人しか!)いない大連は、
マーケットとしての魅力にも乏しいのです。
600万人、と言えば、日本では大都市ですが、
長江デルタの人口が1億4,000万人であることを考えると、
ケタが2つぐらい違う、マーケットの小ささなのです。

もちろん、遼東半島の突端に位置する大連は、
遼寧省(りゃおにんしょん)、吉林省(じーりんしょん)、
黒龍江省(へいろんじゃんしょん)の東北3省の玄関口であり、
東北3省の人口を合わせると1億人を超えることから、
巨大な潜在マーケットが背後に控えていることには
間違いないのですが、いかんせん、東北3省は、
中央政府が「東北振興」政策を
掲げなければならないほどのていたらく。
東北3省の人たちが金持ちになるのを待っていたら、
何十年かかるかわかりません。

今後、大連市は日系の輸出型製造業や
東北3省の経済発展に頼らない、
独自の発展モデルを考えなくてはならないのです。


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2006年5月1日(月)

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