第599回
中国の「おサイフケータイ」

日本では最近「おサイフケータイ」と称して、
携帯電話にお金をチャージして、
買物をするときには、お店の読み取り機に
携帯電話をかざすだけで決済ができてしまう、
というシステムが普及しているようですね。

10年間も日本を離れていると、
浦島太郎状態ですので、
私、正直言って、日本に帰っても、
こうした先端技術を利用したサービスを
使いこなす自信がありません。

先日、東京に出張したときも、
パスネットとスイカの区別がつかず、
自動改札で私の後ろから来た人に、
ずいぶんご迷惑をおかけしてしまいました。
おのぼりさんが慣れないことするから、
こうなるんですな。
すいません、次回から背伸びはやめて、
いちいち現金で切符買います。

そうした意味では、
中国では買物は現金払いが主流、
地下鉄の切符も人が売っていますので、
店員の態度が横柄だったり、
切符を投げてよこされたりすることさえ我慢すれば、
アナログ人間の私にとっては、
わかりやすくて居心地の良い世界です。

しかし、そんな中国にも実は、3年も前から
「おサイフケータイ」があったそうです。

上海市では、3年前に携帯電話を利用した
「電子財布」システムを導入、
携帯電話に現金をチャージする機械を、
市内の地下鉄駅や大型ショッピングセンターに
100台以上設置しました。

しかし、利用する人がほとんどいないため、
故障するたびに撤去され、
現在は25台を残すのみ。
上海の「おサイフケータイ」システムは、
存亡の危機を迎えているそうです。

日本では普及しているのに、
中国では受け入れられない「おサイフケータイ」。
この差は、国民の社会に対する
信用の差から来ているようです。

中国ではものごと全て、
先にカネを払った方が負けです。
現金をチャージした後に、
システムを運営している会社が
倒産してしまうかもしれませんし、
ちゃんとおカネを払ったのに、
「チャージされていない」と
言い張られるかもしれません。

そんな目に遭うぐらいならば、
現金と品物を交換する従来のやり方の方が、
ずっと合理的だし、
トラブルが発生する可能性も低いのです。

中国で「おサイフケータイ」を普及させるためには、
何よりもまず、先払いをした人が損をしない、
「信用社会」を築くところから
始めなければならないのです。


←前回記事へ

2006年8月21日(月)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ