第703回
儲かってるのにカネがない

当社の引越子会社・外運華通の業績が絶好調です。
今年の売上高は昨年比50%以上の伸びを見込んでいます。

これは日本人のお客様に鍛えて頂いた
引越サービスの質の高さと、
リーズナブルな価格設定が、
世界の名だたる海外引越各社に認められ、
次々と引越作業請負契約を
結ぶことができているためです。

作業員は毎日必ずシャワーを浴び、清潔さを保つ。
お客様の衣服を梱包するときには、
必ず清潔な白手袋をはめる。
渋滞が予想されるときには早めに出発し、
お客様とのお約束の時間の30分前には
現場に到着するようにする、などなど。

私たち日本人にとっては当たり前のことばかりですが、
北京のほとんどの引越会社は、
その当たり前のことすらできていません。
市場が未成熟な中国では、
私たち日本人が当たり前と思うことを
当たり前にやるだけで、
まだまだ十分な付加価値を生み出すことができるのです。

外運華通の業績が絶好調なのは
大変喜ばしいことではあるのですが、
問題は業容の拡大に伴って運転資金が足りなくなり、
多額の資金を注入する必要が出てきていることです。
儲かってるのにカネがないのです。

新たに引越作業請負契約を締結するに当たっては、
その請負契約を履行するのに必要な
現場監督、作業員、トラック、ワゴン車を
事前に用意しなければなりません。
また、引越のコストは引越と同時に発生する一方で、
顧客企業との支払い条件は業界の慣習で
「月末締め翌々月末払い」ですので、
請け負う件数が増えれば増えるほど
資金需要が増大していきます。

このため当社は、
今までコツコツと貯めてきた内部留保金を
数十万元(数百万円)単位で取り崩して、
外運華通に注入せざるを得なくなっています。

私は今まで「黒字倒産」とはどういうことかを、
頭ではわかっているつもりだったのですが、
今こういう立場に立ってみると、
その本当の意味が初めてわかりました。
外運華通の体はどんどん大きくなっているのですが、
成長のスピードが速すぎると
自分の体が造る分だけでは血液が足りません。
輸血をして体の大きさに見合った
血液の量を保つことができなければ、
脳に酸素が行かなくなって
会社はすぐに死んでしまうのです。

先輩経営者の方々から見れば、
あまりに初歩的な話なので
笑われてしまうかもしれませんが、
会社というものは人間の体と同じで、
急激に成長すると
いろいろな不具合が出てくることが、
今回、よーくわかりました。


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2007年4月20日(金)

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