第710回
安くておいしい料理と中国の治安の安定

中国に住んでいて強く感じるのは、
中国の人たちは本当に安くておいしいものを
食べている、ということです。

中国料理は世界の四大料理の一つに数えられていますが、
そうした高級料理だけではなく、
老百姓(らおばいしん、一般庶民)が
食べているもののレベルもかなり高いと思います。

私の家の近所にある中国料理店でも、
1人20元(300円)も出せば、
おいしい料理をおなかいっぱい食べられます。

一方、高級中国料理店に行くと、
1人200元(3,000円)食べるのは
難しいことではありません。
しかし、それで料理の味が
近所の中国料理店の10倍おいしいか、
というと、そんなことはなく、
単に料理の素材が高級になっている、
というだけのことなのです。

日本のレストランの料理の値段は、
マーケットの需給で決まっていますので、
安い素材を使っても、おいしいものであれば
ある程度高い値段が付けられますが、
中国では料理の値段は
コストプラス方式で決まっています。

素材の値段に一定の料理の手間賃をプラスして
値段を決めますので、
白菜や鶏肉などコストの安い素材を使った料理は
おいしくても安い値段が付けられ、
フカヒレやアワビなどコストの高い素材を使った料理は
それほどおいしくなくても高い値段が付けられるのです。

中国では料理の値段はおいしさとは比例しませんので、
高いおカネを払えばおいしいものが食べられる
とは限らないのです。

さらに、レストランなどにいかず、
市場で肉や野菜を買ってきて家で料理をすれば、
1人数元(数十円)でたらふくたべることができます。
中国の人たちは男性も女性も料理上手の人が多く、
たまにお宅に招かれて食事をごちそうになると、
レストラン顔負けの料理を作る人もいます。

こうした安くておいしい料理は、
中国の治安の安定に
大きく貢献しているように思います。

中国政府は、肉や野菜の物価を安定させると同時に、
腕の良い料理人の養成を奨励すべきかと思います。
なぜなら、毎日、おいしい料理をたらふく食べられれば、
「国家を転覆させてやろう」などと考える人は
そうたくさんは出てこないからです。

逆にインフレが進んで料理の素材の値段が上がったり、
料理人の質が落ちてまずい料理が
ちまたにあふれたりすれば、
治安が乱れることも大いにありえます。
実際、中国のある工場の従業員たちが起こした
ストライキの要求項目の第一項が
「従業員食堂のメシがまずい。改善されたし」
だったと聞いたことがあります。

食べ物の恨みは怖いのです。


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2007年5月7日(月)

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