第759回
北京はまともなオリンピックを開催できるのか?

北京オリンピック開催まであと1年をきりましたが、
他人事ながらものすごく心配です。
とてもまともなオリンピックが開催できるとは思えません。

オリンピック施設の建設は
非常に順調に進んでいるようなのですが、
オリンピックまでに10本になると言われていた
北京市内の地下鉄と軽軌(ちんぐい、ライトレール)は、
いまだに3本しかありません。
また、頼りの道路交通もマイカーが増えすぎて、
渋滞が常態化しています。

オリンピック開催期間中はマイカーの「ナンバー規制」で、
渋滞が発生しないようにするらしいですが、
それでもいつもの何倍もの人が移動することになりますので、
公共交通機関の整備が遅れればかなりの混乱が予想されます。

大気汚染が深刻になっているのも心配です。

北京市はオリンピック開催のために、
北京市の西の郊外にあった首都鋼鉄の製鉄設備を
全て河北省・唐山市に移転したり、
市街地での石炭燃焼を一切禁止するなど、
様々な環境対策を進めてきました。

その効果もあってか、
北京の空気は年々きれいになり、
10年前に私が北京に来た頃には、
年に数回しか拝めなかった青空も、
結構、普通に見られるようになっていました。

しかし、今年に入ってから、
北京の空気は目に見えて汚くなり、
10年前の状況に戻りつつあります。
最近は天気が良くても空が白く、
月のようにポッカリと空に浮かぶ太陽を
肉眼で見ることができるほど
空気が汚い日もあります。

この大気汚染の元凶は、
マイカーの増加にあると言われています。
ものすごい勢いで増えるマイカーが吐き出す排気ガスは、
北京市が巨額のコストをかけて行った環境対策を
帳消しにしてしまっているようです。

こうした状況を見た
イギリスオリンピック委員会顧問の
マーク・カディナール医師は、
「北京の大気汚染は屋外陸上競技選手、
特にマラソン選手に深刻な健康被害を与える
危険性がある」と指摘し、
「北京オリンピックのマラソン競技で、
世界新記録の樹立は不可能」と
予想しているそうです。

北京の空気をマラソン選手が走れるような
きれいな空気にするためには、
マイカーの「ナンバー規制」を
オリンピック開催期間中だけではなくて、
開催1ヶ月前ぐらいから行う必要がありそうです。


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2007年8月29日(水)

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