第784回
中国に移り住む日本人が少ないワケ

人口5,000万人弱の韓国からは70万人、
人口2,000万人強の台湾からは100万人の人たちが
中国に移り住んで来ている一方、
人口1億3,000万人の日本からは、
香港を含めても10万人しか中国に来ていません。

確かに、日本企業の中国進出は製造業の大企業から、
サービス業の企業や中小企業に裾野が広がり、
中国に派遣される日本人駐在員の数は今でも増加しています。
外務省が発表する国別の海外在留邦人の数でも中国は急増し、
アメリカに次いで第2位となっています。
しかし、韓国人、台湾人が
10万人単位で増えていることを考えると、
その増加は桁違いに少ないのが現状です。

日本人が10万人単位で中国に移り住んでくれれば、
海外引越を生業としているわが社は大儲けなのですが...。

これだけ多くの韓国人、台湾人が
中国に移り住んできているのは、
韓国はアジア通貨危機で、台湾は産業の空洞化で、
国内経済が崩壊の危機に瀕したためです。

邱さんが「夜逃げ専門」とおっしゃっているように、
元々、韓国人や台湾人は日本人より腰が軽い、
というのもあるのかもしれませんが、
国内の仕事がなくなってしまい、食っていけないので、
やむにやまれず海を渡って中国に来た、
というのが本当のところかもしれません。

一方の日本人は、バブル崩壊後、
10年以上にわたる平成不況を経験しましたが
「日本国内には仕事がないので
大量の日本人が海を渡って中国で職を探す」
という事態は発生しませんでした。

これは、日本が「フリーター」や「ニート」のみならず、
「ホームレス」でも餓死せずに生きていけるぐらい
豊かな国である、ということの証左です。
これはこれでとてもすばらしいことです。

しかし、今後、経済のグローバル化が進む世界の中で、
日本はより付加価値の高い産業を育成したり、
日本人にしかできない仕事を探したりすることを少しでも怠れば、
韓国や台湾のように、国内に仕事がなくなって
国民が中国に大量移民せざるを得ない、という事態に陥ることも、
あながちありえないことではありません。

その時になって慌てないように、
余裕のある今のうちに積極的に中国に打って出て、
地歩を固めておく、というのも一つの手かもしれません。
ずっとぬるま湯だと思って浸かっていると、
カエルのようにいつのまにか茹で上がってしまう、
という可能性もあるのです。


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2007年10月26日(金)

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