第838回
アメリカのリセッションは渡りに船?

昨年から始まったアメリカのサブプライムローン
(低所得者向け高金利型住宅ローン)焦げ付き問題は、
徐々に実体経済にも影響を及ぼし始め、
アメリカのリセッション(景気減速)が深刻になってきました。

アメリカのリセッションが深刻化すれば、
アメリカ向けの輸出額が全輸出額の約20%に達している
中国の輸出産業は大きな影響を被ることになります。

ただ、このこと自体は、中国政府にとっては正直なところ、
そんなに迷惑な話ではないのではないかと思います。

中国政府は昨年来、
インフレの元凶となる輸出を減らすために、
輸出税還付の取り消しなど
様々な輸出抑制策を採ってきましたが、
なかなか輸出は減りませんでした。

それは今まで先進国で作るコストの
1/5の価格で輸出されていたものが、
1/4や1/3に値上がりしても
依然として先進国で作るよりははるかに安いので、
先進国に引き続き売れ続けてしまうからです。

これがアメリカのリセッションによって、
アメリカ向けの輸出が少なくなり外貨準備高が減少、
市中に出回る人民元も減ってインフレが沈静化すれば、
「インフレとの戦い」を
今年の最重要課題に挙げていた中国政府にとっては、
むしろありがたいことなのではないかと思います。

また、中国政府の政策によって輸出が減少して、
それによって輸出企業に勤めていた人たちが失業したら、
彼らは中国政府を恨むでしょうが、
アメリカのリセッションで自然と輸出が減った場合、
中国政府は「没弁法(めいばんふぁー、しょうがない)」で
済ませることができます。

そういった意味では、公には言えませんが、
中国にとってアメリカのリセッションは
渡りに船だったのではないでしょうか。

しかし、それは「インフレが沈静化すれば」
という前提の下での話です。

最近中国では、
「経済成長の1/3強を担う輸出が減少し経済成長が減速、
輸出産業では大量の失業者が生まれつつあるにも関わらず、
一向にインフレが沈静化せず、物価は上がり続ける」
という最悪のシナリオが現実のものとなる可能性が
指摘され始めました。

景気が停滞しているのにインフレになる。
いわゆる「スタグフレーション」の可能性です。


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2008年2月27日(水)

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