第889回
価格競争はバカでもできる

中国が前年比8.5%もの物価高に見舞われている一方、
日本の今年4月のCPIは、
物価高で大変だ、と言われながらも、
前年同月比でたったの0.9%の上昇。
食品価格も2.0%しか上がっていません。

中国と日本では置かれている状況が違うとは言え、
国際的な資源、食料価格の高騰の影響は
中国も日本も同じはず。
にも関わらず、CPIの上昇率に
こんなに差が生まれる一つの原因は、
日本企業は中国企業と違って、
原材料の仕入れ価格が上がっても、
企業努力で販売価格を
据え置こうとするためではないかと思います。

多くの日本企業は原材料の仕入れ価格が上がれば、
まずは乾いた雑巾を絞るような生産コスト削減や
経営の効率化で値上げ分を吸収しようとし、
それで足りなければ自社の利益を極限まで削り、
それでもどうしても吸収できない場合に限って、
申し訳なさそうに10円だけ値上げする、という感じです。

これは日本企業には
「値上げをすれば同業他社にシェアを持っていかれる」
という恐怖感があるためではないかと思います。

確かに長期間のデフレで安い価格に慣れた
日本の消費者をつなぎとめるためには、
同業他社と価格据え置きの我慢比べを
しなければならないのかもしれません。

しかし、中国企業があっけらかんと至極当然のこととして
値上げをしているのを見ていると、
日本企業ももっと自社商品の価値に自信を持って、
適正な利益を上げられる値段まで
値上げをすべきなのではないかと思います。

適正な利益を上げられるところまで値上げをしたら、
売れなくなるような商品は
付加価値が低すぎて無理をしなければ売れない、
ということですから、
そんなものを売ってはいけないのです。

日本のニュースを見ていると、
「物価高で生活が苦しくなった」というような話ばかりで、
とても国民の金融資産合計額が
1500兆円もある国の話とは思えません。
逆に言えば、1500兆円も個人の金融資産があるのですから、
付加価値の高いモノやサービスを提供すれば、
値段が高くても買う人はいるはずです。

価格競争はバカでもできますし、
工夫によって商品の付加価値を上げて高く売る、
という商売の醍醐味を味わうこともできません。
日本企業はそろそろデフレ時代の価格競争体質から脱却して、
付加価値の高いモノやサービスを
高く売ることを考えた方か良いのではないか、
と思います。


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2008年6月25日(水)

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