第897回
お金は儲けただけでは半製品

邱さんのおカネ格言の中で、私が一番好きなのは
「お金は儲けただけでは半製品。使って初めて完成品」です。

私たちがおカネを稼ぐ目的は、
そのおカネを使って豊かで幸せな生活を
送ることであるはずなのですが、
いつのまにかおカネを稼ぐこと自体が
目的化してしまうことがよくあります。

この格言は、
預金通帳の億円単位の預金残高に見とれながら、
カップラーメンをすするような人生を戒める言葉である、
と私は解釈しています。

今の中国には高度経済成長のお陰で
お金持ちになった成金がたくさんいますが、
その中にはおカネを更に増やすことにしか
興味がない人も多くいるようです。

私の知り合いでも、
北京市内に高級マンションを何室も持っていて、
家賃収入だけでも普通のサラリーマンの
10倍以上の収入があるのですが、
移動は常に1元(15円)の公共バス、
外食も1食20元(300円)以上はかけない、
という人がいます。

そんな生活を送っている彼なのに、
数百万元(数千万円)もするマンションには、
ポンとおカネを出して即金で買います。

自分の資産になりおカネが仲間を連れて帰ってくる投資には
いくらでもおカネを出しますが、
使ってしまったら一度きりの消費には
最小限のおカネしか使いたくないようです。
まさに「金持ち父さん」を絵に描いたような人です。

将来何が起こるかわからないという恐怖感からでしょうか。
苦労して稼いだおカネを使うことに罪悪感を感じるのでしょうか。
もしくは、高級車や美食には全く興味がないのでしょうか。

どちらにしても、彼自身が幸せならば
私たち部外者が口を挟むことではないのですが、
傍から見ているとおカネを更に増やすことに熱中するあまり、
人生の限りある時間をムダに使っているように見えます。

今の中国は彼のような考え方を持つ成金が多いため、
投資主導から消費主導の経済成長への転換が
なかなか進まないのかもしれません。

中国の成金の人たちには
「お金は儲けただけでは半製品。使って初めて完成品」
という邱さんの格言を知って頂き、
今、自分がおカネを稼いでいる本来の目的を
ぜひ思い出して頂きたいと思います。


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2008年7月14日(月)

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