第968回
始まった韓国人の大量帰国

今、北京に住む韓国人が
大量に韓国に帰る動きが出ています。

10万人を超える韓国人が住んでいると言われる
北京北東部に位置するコリアンタウン・望京(わんじん)では、
1ヶ月間で約4割の韓国人が住宅の賃貸契約を解消した、
という噂もありますし、
今まで望京で韓国人のみを相手に朝鮮族の従業員を使って
オールハングルでやってきた多くの商店やレストランは、
中国人顧客の獲得に必死になっている、
という話も聞きました。

大手不動産仲介会社
「我愛我家(うぉーあいうぉーじゃー)」によれば、
望京地区で韓国人賃貸主が集中する
望京新城、夏都家園、大西洋新城の三大マンションは、
韓国人住人の退去が相次ぎ、
家賃相場がたった2週間で500元(7000円)も下落、
今後も下落が続くであろう、としています。

韓国人の大量帰国が始まっているのは、
中国で嫌韓感情が高まっているため...、
ではありません。

世界的な金融危機の影響を受けた
最近の急激なウォン安の進行により、
ウォン建てで給料をもらっている
韓国人の生活が成り立たなくなっているのです。

昨年11月に1ドル=900ウォンだったウォンは、
最近は1ドル=1400ウォン前後、
1年ちょっとで40%近く下落しました。

これに加えて、
昨年11月に1ドル=7.50人民元だった人民元は、
今は1ドル=6.84人民元と10%ほど高くなっていますので、
ウォン建てで給料をもらって
人民元で買物をする韓国人の収入は、
1年で実質半分になってしまったということになります。

私が北京でこの光景を見るのは2回目です。
前回は1997年のアジア金融危機の時、
同じく急激なウォン安で韓国人の大量帰国が始まり、
北京の街で韓国人を見かけることがほとんどなくなりました。

あの時は11月初旬に1ドル=950ウォンだったウォンが、
12月末には1ドル=1950ウォンと、
たった2ヶ月足らずで50%も急落しました。

今回はそれほど急激ではありませんが、
北京に住む韓国人にとっては1年かけて
97年末と同じことが起きている、
と言うことができます。

私が北京で見た2度にわたる韓国人の大量帰国は、
当然、中国政府も見ています。
経済基盤が盤石でない国が、
為替を自由化するとどういう目に遭うのか。
中国政府は韓国を他山の石として、
今後も当面は為替を自国のコントロール下に置く政策を
続けるのではないか、と私は思います。


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2008年12月26日(金)

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