第970回
「民主主義先進国勢力」対「非民主主義新興国勢力」

イギリスの経済誌エコノミストは毎年
「世界民主主義ランキング」という調査報告を行っています。

この調査は各国の民主主義の度合いを
「選挙プロセスと多元性」、「政府機能」、「政治参加」、
「政治文化」、「市民の自由」という5つの観点から
それぞれ10点満点で採点し、
その平均点の高い国から順にランキングする、
というものです。

2008年度版によれば、対象となる167カ国中
「完全な民主主義国家」と呼べるのは上位30位まで、
率にして18%にしかならないそうです。
「完全な民主主義国家」は1位のスウェーデンを始め、
13位ドイツ、17位日本、18位アメリカ、
21位イギリス、24位フランスなど
そのほとんどを西側先進国が占めています。

一方、31位以下は「不完全な民主主義国家」、
「民主主義と独裁主義が混在するハイブリッド国家」、
「独裁主義国家」と続きます。
いわゆるBRICsと呼ばれる新興国は、
インドが35位、ブラジルが41位で「不完全な民主主義国家」、
ロシアは107位で「ハイブリッド国家」、
中国は136位で「独裁主義国家」と、
全て「完全な民主主義国家」ではありません。

この調査結果から分かるのは、
既に経済発展を果たした先進国では、
民主主義はうまく機能するのかもしれませんが、
これから経済発展をして
先進国に追いつこうとしている新興国では、
コストや時間のかかる完全な民主主義を
実現している余裕はなく、
国民1人1人の政治的権利をある程度制限してでも、
政府が大局的な判断から国家を運営していくことが、
延いてはより多くの国民を豊かに幸せにするのではないか、
ということです。

極端な話、民主主義とは
経済発展を既に果たした先進国の道楽なのかもしれません。
中国も「これが中国式の民主主義だ」などと
訳の分からないことを言わずに、
「独裁主義の何が悪い!
今の中国には独裁主義が最適の政治制度なのだ!」と
堂々と言えば良いのにと思います。

にも関わらず、
アメリカを始めとする先進国が新興国に
民主主義を押し付けようとするのは、
新興国の側から見れば、
コストや時間のかかる民主主義を導入させて
自分たちに追いつかせまいとする、
先進国の嫌がらせにしか見えないのではないでしょうか。
こうした新興国にとっては、
非民主主義の「中国モデル」の成功は
非常に魅力的に見えると思います。

20世紀後半は「資本主義勢力」と
「社会主義勢力」の闘いが繰り広げられ
「資本主義勢力」が勝利を収めました。
これにより全世界が資本主義化した訳ですが、
21世紀の前半は「社会主義勢力」に勝利して
わが世の春を謳歌するアメリカを中心とする
「民主主義先進国勢力」に対して、
中国を中心とする「非民主主義新興国勢力」が台頭し
新たな対立軸となっていくのではないでしょうか。


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2008年12月31日(水)

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