第1049回
裁判の判決さえ変える網民の実力

先日、湖北省巴東県の人民法院は、
同県政府の職員2人を刃物で死傷させたとして起訴された
サウナの女性従業員に対し、
刑事処罰を免除する判決を言い渡しました。

この事件は今年5月、
サウナに行った県政府の職員2人が、
女性従業員に対し一緒に風呂に入るように要求、
拒まれると罵った上でソファに押し倒したため、
女性が手元にあった果物ナイフで2人を刺し、
1人は死亡、1人がケガをしました。

その後女性は殺人などの疑いで警察に拘束されたのですが、
女性の家族や弁護士らが警察に
「不当な拘束」と抗議したことがきっかけとなり、
インターネット上で同県政府や警察に対する批判が爆発、
ある網民(わんみん、インターネット利用者)が
10万人のデモを呼びかけたり、
湖北省政府の北京事務所に
30人が詰め掛けて抗議行動を行ったり、
という事態に発展しました。

こうした動きを受けて警察は
女性の身柄の拘束を解き自宅での監視に切り替え、
裁判所は今回「1人を死亡させたことは過剰防衛に当たるが、
不法な侵害状況下での女性の攻撃はやむを得ない部分もある」
として、刑事処罰を免除しました。

そして、ケガをした方の職員は党籍剥奪と免職処分となり、
治安拘留の処罰を受けました。
女性側の完全勝利です。

このニュースを聞いて驚いたのは、
正当防衛とはいえ人を1人殺した人が
無罪放免となったことです。
普通中国では人を殺すのはもちろん、
傷害事件や巨額の横領でもわりと簡単に死刑判決が出ます。
本件も網民が騒ぎ始めなければ、絶対に有罪、
悪ければ死刑になっていたと思われます。

それが女性は無罪放免で、
逆にケガをさせられた方が処罰を受けるというのは、
中国政府がいかに網民からの批判を恐れているか、
ということを表しているように思います。

中国では今や、インターネット上の意見が
裁判の結果を180度変えるところまで来ているのです。

日本では今年5月から裁判員制度が始まりました。
この制度は裁判官が世間知らずなので、
世間を良く知っている国民のみなさんに裁判員として
刑事裁判に参加してもらおうという制度です。
ただ、この制度でも裁判員に選ばれた人たちの考え方が
世間の意見を代表するとは限りません。

日本でも中国のように、いっそのこと、
インターネットで世間のみなさんの意見を集めて
判決の参考にした方が、より正しい判決が下せますし、
裁判員に選ばれて困る人も減るのではないでしょうか。


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2009年7月1日(水)

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