第1104回
「カネで買える幸せ」と「カネでは買えない幸せ」

今は「おカネを儲けて豊かになれば幸せになれる」と
信じて疑わない中国の人たちですが、
彼らにもいつかは必ず今の日本人のように
「おカネを儲けて豊かになったのに、
今ひとつ幸せを感じられない」と思う日が来ます。

それは世の中には「カネで買える幸せ」と
「カネでは買えない幸せ」があるからだと私は思います。

もちろん人はある程度のおカネを持っていた方が、
幸せになれる確率は高くなると思います。
しかし、それで満足できるのはあくまでも
「カネで買える幸せ」の部分だけです。

以前、「世の中、カネで買えないものはない!」
と豪語していたIT会社の社長がいましたが、
三ツ星のレストランでおいしいものを食べて、
フェラーリに乗って六本木の高級マンションに帰っても、
誰も待っている人がいなければ、
寂しく感じることもあるのではないでしょうか。
家族の役をやってくれる人をカネで雇いますか?
それもちょっとむなしいような気がします。

「カネと幸せは必ずしも比例しない」
という事実に気付いた日本人は、
カネを儲けて「カネで買える幸せ」を追求するよりも、
「自分のレベルに合った生活をする」、
「親しい人と仲良く暮らす」、
「人の役に立つことをする」、
「環境に良いことをする」などなど、
カネはかからないが心の充実感を高めてくれるような
「カネで買えない幸せ」を手に入れることの方が
背伸びしていなくて「カッコいい」、
という価値観を持ち始めているのではないでしょうか。

一方、高度経済成長で
豊かになり始めたばかりの中国の人たちは、
今のところ「カネと幸せは比例する」と信じ、
日夜、金儲けに邁進しています。
彼らは今、豊かになるたびにどんどん広がっていく
「カネで買える幸せ」を満喫しています。

しかし、今後、中国の高度経済成長が終わり、
中国の人たちが十分豊かになったにも関わらず、
以前思っていたほど幸せになっていない自分を
発見するときが必ず来ます。

そして、その時点で彼らは改めて
今の日本人のように「カネで買えない幸せ」の存在を
認識するのではないでしょうか。


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2009年11月6日(金)

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