第1106回
中国共産党にとってのマスメディア

これまで中国共産党にとってマスメディアは、
プロパガンダの道具でしかありませんでした。
このため、中国共産党の一党独裁に不利になる報道は、
検閲により全て排除されていました。
しかし、最近、中国のマスメディアにも
大きな変化が起こり始めているようです。

中国で最も影響力があると言われている
経済誌「財経(つぁいじん)」。
先日、その「財経」で内紛が起こり、
編集長を含む編集・管理スタッフの大半が退職する、
という事件がおきました。

事件の原因は発行元と編集部門の対立です。
「財経」は国内経済や社会の暗部に切り込む報道が
売り物となっていたのですが、
発行元の中国証券市場研究設計センターは
マスメディアの監視を行う中国共産党中央宣伝部から
過激な報道を控えるよう圧力を受けていました。
このため同センターの経営陣が
穏便な報道を編集部門に指示したところ、
編集部門は猛反発、
そして、今回の大量退職に至ったというわけです。

中国にも骨のあるジャーナリストがいるんですなぁ。

退職組は近く、浙江省の有力紙・浙江日報の協力を得て、
新しい経済誌と経済ニュースサイトを始めるそうです。
そして驚いたことに、浙江日報が協力することになったのは、
かつて浙江省のトップ、党委員会書記を務めていた
習近平国家副主席が退職組を支援しているためであると
言われています。

この報道が本当であれば、
習近平国家副主席が身内である党中央宣伝部のやり方に
異を唱えたような形になりますが、
最近の中国の状況を見ていると
「そういう可能性もあるのではないか」と思えてきます。

2005年にも北京のタブロイド紙「新京報」が、
中国共産党の暗部を暴くような独自取材の報道をしたため、
編集幹部が更迭され、
それに抗議する記者100人がストライキをする、
という事件がありましたが、
現在の中国共産党の危機的状況は4年前の比ではありません。
党中央宣伝部がマスメディアを抑え込もうとする行為が、
民衆の反党、反政府の世論に
火をつけてしまう可能性も大いにあり得るのです。

民衆の立場に立った報道をするジャーナリストを敵に回せば、
中国共産党は民衆そのものをも
敵に回してしまうことになります。
今や中国共産党は、
今までのようにマスメディアを抑え込むのではなく、
マスメディアの指摘を真正面から受け止め、
それに真摯に対応して
国を良い方向に導いていく姿勢を見せることでしか、
民衆の支持を得ることはできないのです。


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2009年11月11日(水)

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