第1109回
「西高東低」の成長格差

中国の今年1-9月の
経済成長を構成する三要素のそれぞれの伸び率は、
1.投資が前年同期比+33.3%、
2.消費が同+15.1%、
3.輸出が同−21.3%でした。

輸出の落ち込みを投資でカバーしたような形になっていますが、
この状態は「西高東低」の成長格差を生みました。

今まで中国の東部、即ち沿海部は
「世界の工場」と呼ばれ、
輸出をそのエンジンとして
中国の経済成長を引っ張ってきました。
しかし、今回の金融危機によるアメリカを始めとする
輸出相手国の消費の落ち込みは、
中国の輸出を急激に減少させ、
沿海部の経済を冷え込ませました。

一方の中国の西部、即ち内陸部は、
沿海部と違って輸出増加の恩恵を
あまり受けることができていなかったのですが、
その分、金融危機による輸出急減の影響が
小さくて済みました。
そして更に、中国政府は
「近い将来の計画の前倒し」という形で、
内陸部に財政出動による投資を集中させましたので、
内陸部は景気が落ち込む沿海部を尻目に、
10%以上の成長を続けることができました。

このため、沿海部:内陸部=2:1と言われていた
経済規模の差は縮まり、
沿海部で仕事がなくなった
「農民工(のんみんごん、出稼ぎ労働者)」は
それぞれの故郷に帰って仕事を見つけ、
今まで沿海部を主戦場としてきた各企業は、
にわかに勃興する内陸部マーケットに
注目するようになってきたのです。

中国政府は金融危機という機会を利用して、
沿海部と内陸部の経済格差を是正し、
国民の間の貧富の格差を小さくし、
中長期的な国内情勢の安定を図りました。
さすがは「転んでもタダでは起きない中国政府」です。

金融危機が始まった頃、
中国政府のエラい人たちが
「危機の危は危険の危だが、危機の機は機会の機である。
我々はこの危機を機会と捉えよう」と言っているのを、
耳にタコができるほど聞きましたが、
今になってその意味がちょっとわかったような気がします。


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2009年11月18日(水)

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