第1125回
中国企業が日本企業を買い占める日

前回お話しした映画「ハゲタカ」。

2007年のテレビドラマのときには
日本企業を買い叩くのは
アメリカ系投資ファンドという設定だったのですが、
今年公開の映画版では現実味を出すために
その役回りは中国政府系ファンドとなっていました。

しかし、私個人的な意見としては、
中国政府系ファンドが日本企業を買い叩く、
という設定も、現実味があるとは思えません。
なぜなら、中国政府や中国企業が
日本企業の買収に興味があるとは思えないからです。

企業買収の目的は、簡単に言えば
「自社が持っていない経営資源を手っ取り早くカネで買う」
ということだと思いますが、
その経営資源にはマーケット、人材、技術、ノウハウ、
設備、資源など様々なものがあります。

例えば、マーケット。
日本企業を買収すれば、その企業が既に持っている
日本国内のマーケットが手に入りますが、
中国企業にとってみれば、既に成熟したマーケットで
縮みゆくパイの奪い合いをするぐらいなら、
未成熟で伸び盛りの自国のマーケットを開拓した方が、
ずっと効率が良いはずです。

また、技術やノウハウについても、
よっぽど最先端のものでなければ、
日本企業が作った製品を1つ買って分解してみたり、
そうした技術やノウハウを持った人を
雇ったりすれば済む話であり、
企業をまるごと買うほどのことではないような気がします。
実際、中国には非常に質の高い
日本製品のコピー商品があふれていますし、
日本企業を定年退職した技術者が
中国企業に請われて技術顧問を務める、
というような例もたくさんあります。

今年8月、日本の家電量販チェーン・ラオックスを
中国の家電量販大手・蘇寧電器が買収して話題となりました。

蘇寧電器はこの買収を
「共同仕入れ体制の確立やノウハウの交換のため」
などと言っていますが、
ホンネは「1回の日本旅行で何十万円も家電製品を買う
おいしい中国人旅行客のカネを、
みすみす日本の家電量販店に持って行かれたくない」
ということなのではないかと思います。
要は蘇寧電器のラオックス買収の狙いは、
日本のマーケットでも日本企業のノウハウでもなく、
爆発的に伸びる中国人マーケットなのではないでしょうか。

となると、今後も
「中国企業が日本企業を買い占める日」は
来ないのではないか、と私は思います。
ホッと胸を撫で下ろした方もいるかもしれませんが、
この状況、「日本企業には買収するほどの魅力がない」
ということでもありますので、
喜んで良いのか悲しんで良いのか、
ちょっと複雑な心境です。


←前回記事へ

2009年12月25日(金)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ