第1140回
映画「アバター」のモチーフは中国の立ち退き現場!?

世界中で大ヒットとなっている
アメリカのSF映画「アバター」。
中国でも「阿凡達(あーふぁんだー)」という中国語名で
今月初めから公開され、大人気となっているようです。

北京の地下鉄駅構内で見つけた「阿凡達」の広告

この「アバター」、
最新の3D(スリーディー)技術を駆使した作品なのですが、
この立体映像に対応できるIMAX(アイマックス)シアターは
中国国内に11ヶ所しかありません。
その内の1つ、上海市中心部の「和平映都」では、
通常の映画の5倍に当たる150元(1,950円)という
高額のチケットにも関わらず観客が殺到、
2000人近い観客の行列が深夜まで続いた日もあったそうです。

中国のメディアでも「商業娯楽映画のお手本だ。
中国映画界はこの映画を観て反省すべきだ」(中国経営報)
などの好意的な意見が多いのですが、
網民(わんみん、ネット市民)たちは、
全く別の部分で盛り上がっているようです。

この映画のストーリーは、
パンドラという星の希少鉱物を狙う地球人の立ち退き要求を、
その星のナヴィと呼ばれる原住民が跳ね返す、
というものなのですが、その設定が、
カネのなる木である土地を狙う共産党の役人が、
ろくな補償もせずに住民に立ち退きを要求し、
その理不尽な要求を地域住民が跳ね返す、
という姿に重なり、
中国では多くの人たちが「アバター」を観て、
大いに溜飲を下げているようです。

このため、ネット上では、
「この映画は立ち退き拒否世帯が
暴力との戦いに勝利する物語だ」とか、
「キャメロン監督は、密かに中国に潜入して
シナリオを練ったのではないか」
などといった発言が相次ぎ、
中には、中国の立ち退き現場の映像と
「アバター」の映像を編集した立ち退き抵抗動画を
無料動画サイトにアップする人も出てきているようです。

実際、中国では、経済開発を急ぐ地方政府と
地元住民との間で立ち退きに絡むトラブルが多発しています。

昨年11月には上海市で女性家主が火炎瓶を用意して
立ち退きを迫る当局とにらみ合った末、
強制排除された映像がテレビで放送され話題となりました。
また、先日も江蘇省で鎮のトップである党委書記が、
暴力団員を動員して立ち退き反対派の住民を殺傷したとして、
1000人以上の住民がデモ行進をし警官隊と衝突する、
という事件が起きました。

中国の一般庶民が映画やドラマを観ると、
悪役が全員、共産党の役人に見えてしまう、
というような事態を避けるためには、
共産党中央は地方政府の無茶苦茶な行政を厳しく取り締まり、
一般庶民の側に立った政治を末端まで徹底させる必要が
あるのではないかと思います。


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2010年1月29日(金)

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