第1173回
無茶苦茶な翻訳が世に出てしまうワケ

今後、日本でも中国人観光客の人たちが増えるに従って、
中国語の表記やアナウンスが増えていくと思うのですが、
日本語から中国語に翻訳をする際には、
ぜひ、中国人が見たり聞いたりしてもおかしくない
中国語に訳して頂きたいと思います。

この問題は既に中国における日本語業界では多発しています。

例えば、下記の写真。
「鉄板黒椒牛柳(牛肉の黒胡椒鉄板焼き)」という
非常にポピュラーなおいしい料理であるにも関わらず、
「鉄板の暗い刺激性の味がする植物の牛柳」という
オーダーするのを思い止まりたくなるような、
かなり怖い日本語訳が付けられており、
せっかく日本人のために日本語訳を付けてくれているのに、
逆効果になってしまっています。

更に、他のメニューもこんな感じで、
日本語訳が無茶苦茶です。

ちなみに、このレストランの
名誉のために言っておくと、
その後、「どうもメニューの日本語訳が
日本人客の爆笑のネタにされているらしい」
ということに気付いた店長が、
新たにきちんとした翻訳会社に
翻訳を頼んでメニューを作り直し、
今では、正しい日本語訳が付いた
メニューに変わっています。

こうした無茶苦茶な翻訳が世に出てしまう背景には、
翻訳業界の構造に問題があると思われます。

私も以前、仕事が無くて困っていたときに、
中国語と日本語の間の
翻訳の仕事をしたことがあるのですが、
そのときに強く感じたのは、
翻訳業というのは大きな責任を伴って、
大変な作業であるにも関わらず、
翻訳料金の相場が安く全く儲からない、
ということです。

翻訳業界は非常に参入障壁が低く、
在宅の翻訳者を何人か揃えれば、
次の日からでも翻訳会社の社長になれます。
このため、参入する会社が多くて競争が激化し、
翻訳料金の相場がどんどん下がっていくと、
コストを削減するために、
日本語を習い始めたばかりの学生など
質の低い翻訳者を安く雇う会社も出てきます。

日本語を習い始めたばかりの学生は、
かなりひどい日本語訳を出してくるのですが、
翻訳会社の社長も、発注者も
それが正しい日本語なのかどうかを判断できませんので、
結果として無茶苦茶な日本語訳がそのまま印刷されて、
せっかく日本人のために日本語訳を付けてくれたのに、
日本人に爆笑のネタにされてしまうのです。

今後、日本でも日本語を中国語に翻訳する需要が
大きくなっていくものと思われますが、
日本語を中国語に訳した表記やアナウンスを作る際には、
日本に来た中国の人たちに爆笑のネタにされないように、
翻訳料金が高くても、きちんとしかるべき中国人の人が
ネイティブチェックをするような翻訳会社に、
翻訳を依頼するのが良いのではないかと思います。


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2010年4月16日(金)

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