第1218回
幸せの微分・積分

日本から来た方とお会いすると
「中国の人たちはみんな元気ですね。
日本人なんかみんな下向いて歩いてますよ」
というようなお話を聞くことがよくあります。

これは、中国では所構わず大声で話す人が多いのに対して、
日本では公共の場所で大声で話すことは
マナー違反とされていますので、
外を歩いていると何となく中国の人たちの方が
元気で勢いがあるように見えるのかもしれません。

しかし、そうした慣習の違いを差し引いても、
確かに、中国には日本のような閉塞感はなく、
みんな自分が将来、豊かに幸せになることを確信しながら、
毎日を生きているように見えます。

これは中国の人たちが豊かさや幸せを
微分的に捉えているからなのではないかと思います。
今はそれほどではなくても、
この右肩上がりの傾きでいけば、
10年後、20年後にはものすごく
豊かで幸せになっているであろう、という希望が、
彼らを元気にしているのでしょう。

一方の日本。
今年は確実に国内総生産(GDP)で中国に抜かれ、
世界第2位の経済大国の座を
譲り渡さなければならないとは言え、
1人当たりのGDPではまだまだ中国の10倍。
中国の人たちの10倍豊かなのですから
10倍幸せでもよさそうなものですが、
日本国内には閉塞感が漂い、10倍幸せどころか
中国の人たちよりもむしろ不幸せそうに見えます。

この原因は、日本人も中国の人たちと同じように、
豊かさや幸せを微分的に
捉えてしまっているためではないかと思います。

これから日本は少子高齢化で労働力人口が減少し、
国力が右肩下がりで衰退していくことを考えると、
将来に希望を見出せなくなり、
それがどんよりとした閉塞感を生み出しているのでしょう。

しかし、豊かさや幸せを積分的に考えれば、
日本人は中国の人たちより10倍豊かであり、
10倍幸せであってしかるべきです。
今後、日本経済が復活して、
右肩上がりになればそれに越したことはないですが、
もし、微分的に右肩下がりになったとしても、
積分的にはまだまだ十分豊かなわけですから、
将来を悲観して閉塞感の中で生きるよりも、
今の豊かさに感謝しながら
幸せに元気に暮らしていった方が良いような気がします。

高校の数学で微分・積分を習ったときには
「こんなこと勉強して、将来何の役に立つんだ?」
と不満に思っていたのですが、
こんなところで役に立つとは思いませんでした。


←前回記事へ

2010年7月30日(金)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ