第1223回
中国の格付けは米国、日本より上?

先日、中国の民営格付け機関である
大公国際資信評估有限公司が、
世界経済の90%を占める50カ国に対して
信用格付けを行いました。

世界的な金融危機や
最近のヨーロッパ債務危機に際して、
事実上市場を独占している
スタンダード&プアーズ(S&P)、
ムーディーズ、フィッチレーティングスの
国際信用格付け大手3社には、
権限と責任の不均衡、透明性の不足、
利益対立への介入などの批判が高まっています。

こうした批判を受けて、今回中国は、
自国の格付け企業による
独自の格付けを行うことにした、とのことです。

この格付けによれば、
中国の外貨建て格付けは最高ランクのAAA、
自国通貨建て格付けは上から2番目のAA+となりました。

一方の米国は外貨建て、
自国通貨建て共に上から3番目のAA、
日本はそれより更に低く、外貨建てがAA、
自国通貨建てがその下のAA-という評価になりました。

S&Pの格付けでは、米国は最高ランクのAAA、
日本は上から3番目のAAであるのに対し、
中国は上から5番目のA+と両国より下なのですが、
独自の格付けでは中国の格付けは両国より上、
という評価になりました。

この理由について、同社は
「政治が安定し、経済成長の伸びが大きい
新興国に高い評価を与えた。
一方、長期的な経済低迷の中にあり、
債務負担が大きい先進国の格付けは低くした」
としています。

独自の格付けで自国の評価を高くすると、
「また、中国の自画自賛が始まった」と
世界の失笑を買いそうですが、
同社のコメントを見ていると、私個人的には、
中国が言うことも一理あるように思います。

確かに中国は様々な問題を抱え、
破綻リスクもないことはないと思いますが、
経済成長のおかげで財務体質は非常に健全であり、
国の債務のGDP比は、日本が200%近く、
米国が60%台であるのに対し中国は20%台です。

更に、政治の安定という点に関しても、
毎年首相が変わっている日本は論外としても、
4年に一度の大統領選挙で
どちらの党が政権を取るかで
国の政策が変わってしまう米国に対して、
中国は中国共産党が10年先、20年先を見据えて、
一貫した執政を行っています。

世界は中国が民主主義国家でないことを
リスクと見るかもしれませんが、
中国共産党一党独裁体制は明らかに
中国の国内情勢の安定度を高め、
国家の破綻リスクを軽減しているのではないか、
と私は思っています。

格付け会社の格付けは、
国債発行の際の金利に反映されますので、
国家の資金調達コストに大きな影響を与えます。
しかし、どちらの格付け会社の格付けが正しいか、
ということではなくて、どちらを信じるかは、
最終的には国債を買う投資家が
判断すれば良いことなのではないか、
と私は思います。


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2010年8月11日(水)

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