第1233回
税金の取られ方によって変わる「被搾取感」

前回ご紹介した、
中国の「知らないうちに納税」方式。

「そんなものは愚民政策であり、
それを日本に導入させるなどもってのほか。
日本国民をバカにしておる」とお叱りを受けそうですが、
税金というのは取られ方によっては、
「被搾取感」が違ってくる、
というのもまた事実であると思います。

例えば、毎月の給与明細書。
「月給額面50万円、
所得税、社会保険20万円差し引き後の、
手取りは30万円」と書いてあるのと、
「月給手取り30万円、
所得税、社会保険20万円は
会社側で負担します」と書いてあるのとでは、
全く同じことを言っているのに、
前者の方が「被搾取感」が大きいと感じる方が
多いのではないでしょうか。

前回お話しした消費税の話でいくと、
前者が日本の課税方式、後者が中国の課税方式です。
もっと正確に言えば、中国の場合
「所得税、社会保険20万円は会社負担」
ということも給与明細書には書きませんので、
従業員は「知らないうちに納税」している、
ということになります。

中国の課税方式は専門用語で言うと
「間接消費税」と言うらしいです。
最終的な消費行為の前の段階で
モノやサービスに対する課税が行われ、
税負担がモノやサービスのコストに含まれることによって
最終消費者に転嫁することが予定されている税金です。

この「間接消費税」、
実は既に日本でも導入されています。
身近なところでは、酒税がその代表です。

例えば、定価230円の
350ミリリットルの缶ビールを1缶買う場合。
私たちは酒税の存在などあまり気にせずに
おカネを払っていますが、
定価230円のうち約1/3の77円は酒税です。
これが消費税のように
「230円(本体153円、酒税77円)」と表示されていたら、
かなりの「被搾取感」を感じるのではないでしょうか。

そういった意味では、
日本で2004年から始まった消費税の総額表示方式。
表向きは「消費者が混乱しないように」
ということになっていますが、本当は
「本体9,800円、消費税490円」という
消費税納税額がはっきりとわかる表示から、
「10,290円(税込)」という消費税の存在が
あまり気にならないような表示方法に統一して、
国民の消費税納税意識を薄め、
将来的な消費税増税の布石を打った、
財務省の愚民政策の一環なのかもしれません。

日本は中国と違って民主主義国家です。
中国の人たちのように
政府に愚民政策を採られたくなかったら、
国民1人1人に
「自分のポケットにおカネが入るか入らないか」
などという低レベルの判断基準ではなく、
常に国の将来を第一に考える
高い志と見識が求められるのではないか、
と私は思います。


←前回記事へ

2010年9月3日(金)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ