第1241回
なぜ中国人観光客は日本で炊飯器を買うのか?

大型バスでデパートや家電量販店に乗り付けて
大量の買い物をする中国人観光客の姿は、
日本のニュースや情報番組ではもうおなじみです。

1つのお店で数十万円もの買い物をするので、
日本のマスコミは
「中国人富裕層のものすごい購買力!」
というようなキャプションを付けますが、
あれは親戚や友達からおカネを託されての買い出しだったり、
共産党のエラい人との関係(ぐぁんし)構築用の
会社経費だったりしますので、買い物をしているご本人は
それほど大金持ちというわけではないように思います。

第一、ホンモノの富裕層であれば、
日本に行くために大型バスで乗り付けるような
観光ツアーに参加することなどせず、
いろいろなツテを使って日本の会社に招聘状を出してもらい、
商用ビザを取って入国するでしょう。

さて、家電量販店に乗り付けた中国人観光客のみなさんは、
いろいろな日本製品を買われていますが、
その中でも炊飯器を3つ4つとまとめ買いしている映像に
ビックリされた方も多いのではないでしょうか。

なぜ日本まで来て炊飯器なの?
それもあんなにかさばるのに...。
中国には炊飯器売ってないの?

いえいえ、もちろん中国でも炊飯器は売っています。
それも日本の1/10ぐらいの値段で。
では、どうしてわざわざ日本まで来て
4万円前後もする炊飯器を買って、
大変な思いをして中国まで持って帰るのか。

それは、日本製の炊飯器には
お米をふっくらとおいしく炊く、
様々な機能が付いているからです。

従来、中国ではお米は饅頭(まんとう)、
面(みぃえん)などと共に主食に属する
ランクの低い食べ物であり、
肉料理や野菜料理を食べたあとに、
お腹の隙間を埋めるためのものでしかありませんでした。
このため、中国の炊飯器は値段が安い代わりに、
「ただ炊けるだけ」のものがほとんどです。

しかし、最近、中国の人たちの食習慣も変化してきており、
コシヒカリ、あきたこまちなど
日本由来の高級米も売られるようになりましたので、
「お米をおいしく炊きたい」という需要が
急速に高まっています。

その点、昔から「はじめちょろちょろ、中パッパ、
赤子泣いてもフタ取るな」と言い伝えられ、
おいしいご飯の炊き方には一日の長がある日本では
炊飯器も究極まで進化しており、
象印の真空かまど釜を使った「極め炊き」や、
日立の黒厚鉄釜を使った「圧力スチーム極上炊き」など、
日本の最先端の技術を「これでもか!」というぐらいに使った
お米をふっくらとおいしく炊く炊飯器が
たくさん売られています。

中国では「お米をおいしく食べる」というのは、
全く新しいライフスタイルです。
その全く新しいライフスタイルをもたらす
日本製の炊飯器をエラい人にプレゼントして、
その奥様のハートをがっちりと鷲掴みにできれば、
4万円の投資は100倍にも1,000倍にもなって返ってくる。

これが日本の家電量販店で炊飯器を
3つも4つも積み上げている中国人観光客の
頭の中に広がっている皮算用なのではないか、
と私は思います。


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2010年9月22日(水)

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