第1270回
北京のスーパーで見た白菜争奪戦

先日、オフィスの近くにある
京客隆(じんかーろん)という中国系スーパーに行ったところ、
青果売場の方で騒ぎが起こっていました。

近付いてみると客同士が白菜の奪い合いをしています。
品切れで白菜を買えなかった他の客たちは、
店の人に向かって「もっと白菜出せ!」、
「在庫があるのはわかってるんだ!」と口々に叫んでいます。

これに対し店の人は「確かに白菜の在庫はありますが、
みなさんが奪い合うと危ないので、
今日はもう白菜は売りません!」と説明するのですが、
客は納得しません。
押し問答の末、客がきちんと並んで買うことを条件に、
店の人が白菜の在庫を出してくることになったのですが、
白菜が出てくると、今後は列の前の方の客が
4つも5つもまとめ買いを始め、
また品切れで白菜を買えなくなるかもしれない
列の後ろの方の客から罵声が飛ぶ、という、
何とも激しい白菜争奪戦が繰り広げられていました。

なぜ、北京のスーパーではいい大人が、
白菜の奪い合いをしているのか?

その理由の一つは、韓国キムチ危機であるようです。
先日、韓国では今年夏の天候不順により白菜が不作で、
キムチが不足する可能性があったため、
中国が100トンの白菜を緊急輸出した、
というお話をしましたが、
この韓国向けの白菜の輸出により、
今度は中国国内の白菜が不足、
品不足に加えて価格も高騰しているようです。

このため、北京のスーパーでは、品薄で貴重な白菜を、
みんなで奪い合う、という現象が起きているようです。

さらに、そんな無理をして輸出した白菜も、
韓国国内では「中国産の白菜なんて食べて大丈夫か?」
という不安の声が上がり、
実際、中国が緊急輸出した白菜が
韓国のスーパーで大量に売れ残る、
という現象も起きているようです。

当初は「中国は韓国のキムチ危機を救う救世主になる!」
と得意満面の中国政府でしたが、
こんな踏んだり蹴ったりの状況に陥るのであれば、
いくら韓国の李明博大統領による
直々の緊急輸出要請であったとしても、
国内情勢の安定のため、という理由で
断っておいた方がよかったのかもしれません。


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2010年11月29日(月)

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