第1290回
北京でマイカーが買えなくなる!?

どんどんひどくなる北京の街の渋滞。

昨年、米紙「フォーリンポリシー」が発表した
「世界で交通渋滞が最も深刻な都市ワースト5」で、
北京は堂々のワースト1、つまり、
「世界一交通渋滞が深刻な都市」の称号を与えられた、
とのことです。

実際、北京の街の渋滞はひどく、
特に朝夕のラッシュ時には、
市街地はどこもかしこも渋滞だらけ、
地下鉄に乗れば20分ほどで到着できるところでも、
車だと1時間以上かかったりします。
北京では既にマイカーは便利な交通手段ではないのです。

しかしそれでもマイカーで通勤する人は減りません。
マイホームからマイカーで
街の中心部のオフィスまで通勤するのは、
北京のホワイトカラーにとっては一つのステータス。
渋滞に巻き込まれて通勤に1時間以上かかろうとも、
意地でもマイカー通勤を続けて
自らの自尊心を満足させたいのでしょう。

そんな状態に業を煮やした北京市政府は、
今年から本格的に渋滞緩和の取り組みを始めるようです。

北京市政府は先日、
第12次5カ年計画(2011-2015年)の期間中は、
市政府機関に新たな自動車購入を禁じることを提案しました。
マイカー増加に歯止めをかけるにはまずは自分たちから、
「隗より始めよ」です。

また、同政府は今年の自動車のナンバープレート発行枚数を、
昨年の新規登録台数の1/3以下となる
24万枚に制限することを発表しました。
割当の方式は上海のような競売ではなく、
月1回の抽選で行われ、
ナンバープレートはその当選者に
無料で配布されるのだそうです。

さらに、同政府内では、市内の駐車料金を引き上げたり、
渋滞の激しい地域で渋滞通行料を徴収する、
という案も検討が進められているようです。

しかし、北京では自尊心を満足させるために
マイカーで通勤している人もいる一方、
マイカーに乗らないと通勤ができない人が増えている、
という事実もあると思います。

北京では不動産価格の高騰により
人の住む場所がどんどん郊外に広がっており、
その速度に公共交通機関の整備が追いついていません。
このため、北京市郊外の新興住宅地の中には、
不動産開発業者が運行するすし詰めの送迎バスで、
一番近い地下鉄の駅まで1時間近く
揺られて行かなければならないような場所もあるようです。
こうした話を聞くと「マイカーでもっとラクに通勤したい」
と思う人の気持ちも分からないではありません。

こうした急速な発展によって発生した
歪みによる問題を解決するためには、
いきなりマイカーの購入を制限するのではなく、
不動産価格を抑制して、普通のサラリーマンでも
公共交通機関があるところに住めるようにしたり、
公共交通機関の整備を急いだりする、という
根本的な対策を進めるのと同時に、
地下鉄の駅の近くに無料駐車場を作って
「パーク&ライド」を促すなど、
実態に即したやり方が必要なのではないかと思います。


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2011年1月12日(水)

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