第1295
チュニジアの独裁政権崩壊に学ぶ中国の未来

先々週、北アフリカのチュニジアで、
23年にわたって独裁体制を続けてきたベンアリ大統領が、
物価高、高失業率、腐敗、言論統制などに怒った民衆のデモで
辞任を余儀なくされ、国外に逃亡しました。

この民衆のデモの発端は、
同国中部の都市・シディブジッドの路上で
物売りをしていた青年が、
警察の取り締まりに抗議して
焼身自殺を図ったことでした。
この情報が若年層を中心に
インターネットで同国全土に広まり、
全国規模の反政府デモにに発展、
大統領を辞任、国外逃亡させるに至りました。

民主的な選挙が存在しない国が大半のアラブ諸国では、
クーデターなどで権力を掌握し、
そのまま形式的な選挙で政権の座に
居座ってしまう独裁者が多いのだそうです。

エジプトのムバラク大統領は30年近く、
リビアのカダフィ大佐は41年間、
イエメンのサレハ大統領は21年間、
独裁者として長期政権を維持してきましたが、
これらの国々の現政権は今回のチュニジアでの
民衆による独裁者追放に衝撃を受けており、
自国でも同じことが起こるのではないかと
戦々恐々としているようです。

戦々恐々としている人たちは、
アラブから遠く離れたここ北京にもいそうです。

物価高、高失業率、腐敗、言論統制。
警察の取り締まりに対する抗議行動が大規模なデモに発展。
情報が若年層を中心にインターネットで全土に広がり、
全国規模の反政府デモに発展。

チュニジアで起きた今回の独裁政権崩壊の
1つ1つの要因を見ていくと、それらは全て、
今、中国で起きていることとそっくりです。

そう考えると、
中国政府がインフレによる物価高を
必死に抑えようとしているのも、
失業者をこれ以上増やさないように、
毎年8%の経済成長を死守しようとしているも、
共産党中央が地方の共産党員の腐敗を
徹底的に取り締まるのも、
最終的には都合の悪い発言は削除できるように、
国内資本の会社だけに限ってはいるものの、
微博(うぇいぼー、マイクロブログ)や
掲示板への書き込みを容認して、
国民のガス抜きを図っているのも、
どれも非常にうなずける政策です。

今の中国は独裁政権崩壊の要因がてんこ盛りで、
放っておけばいつどこから崩壊しても
おかしくないような状態なのです。

しかし、チュニジアでは独裁政権崩壊後治安が悪化、
略奪や暴力などで多くの死者が出ているようです。
チュニジアは人口1000万人ですが、
100倍以上の人口を擁する中国で同じことが起きた場合
どんな混乱が起きるのか、
ちょっと考えただけでも戦慄を覚えます。

中国の民衆が一致団結すれば、
中国共産党一党独裁政権を崩壊させるのは、
既に可能なのではないかと思われます。
しかし、崩壊させた後の混乱、
長期にわたる停滞、国力の低下を考えた場合、
現在の「ネット民主主義」のように
民衆が独裁政権にプレッシャーを与え続け、
中国共産党自身がより良い方向に
自ら変わっていくことを促す方が、
民衆にとっては最終的に
最も賢い現実的な選択であるのかもしれません。


←前回記事へ

2011年1月24日(月)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ