第1301回
上海と重慶で不動産税導入

中国では住宅ローンの厳格化など
中国政府が何度も不動産価格抑制政策を
打ち出してきましたが効果は薄く、
昨年12月の都市部住宅価格が
前月比で4ヶ月連続上昇するなど、
中国の不動産価格は上がり続けています。

中国政府がこれだけ「不動産価格を抑制する」と
はっきり言っているのに、
不動産に投資する人が減らないのはどうしてなのでしょう。
それは、中国の人たちの不動産という資産に対する
信頼感が絶大であることもありますが、
住宅ローンを借りまくって
不動産を買っている人がたくさんいる現状で、
不動産価格が急激に下落して担保価値が落ちれば、
ローンを返済できずに自己破産する人が続出すると同時に、
銀行も巨額の不良債権を抱えることになりますので、
「中国政府も手荒なことはしないだろう」と
タカをくくっている、ということもあるように思います。

要するに、中国の不動産投資家は
中国政府をナメているのです。

しかし、中国政府もナメられっぱなしではありません。
ついに伝家の宝刀を抜く構えを見せました。

先月末、中国国務院の決定を受け、
上海、重慶の両市は日本の固定資産税に当たる
不動産税を導入しました。

今までの不動産価格抑制政策は住宅ローンの厳格化など
「新たに買いにくくする」政策でしたが、
不動産税は既に買われている不動産に課税して
不動産の維持コストを引き上げることが可能ですので、
新たに買いにくくする他に
「今保有している不動産を売らせる」効果も期待でき、
課税対象や税率によっては不動産価格を
大幅に下げることも可能です。

しかし、ふたを開けてみれば、
上海と重慶で導入された不動産税の課税対象は、
上海は「新規購入の」2軒目から、
重慶もマンションは「新規購入の」高級物件のみであり、
今までマンションを買った人には
課税されないようになっています。

これでは今までの
「新たに買いにくくする」政策とあまり変わらず、
「今保有している不動産を売らせる」効果は
全くありません。

中国政府としては「まずは緩い対策で様子を見てから」
ということなのでしょうが、
一方では、不動産にたくさん投資しているような富裕層には、
政府機関上層部・国有企業経営者など
中国共産党幹部の既得権益層が多く、
こうした層からの根強い反対があるため
思い切った対策が取れない、という見方もあります。

だいたいが、清貧で
「為人民服務(うぇいれんみんふーうー)」のはずの
中国共産党幹部が、
不動産にたくさん投資している既得権益層として
不動産税の導入に反対する、というのもふざけた話です。
中国政府が本気で人民の為の政治をする気があるのならば、
不動産税の課税対象に
「中国共産党幹部が所有する全ての不動産」を入れるなど、
伝家の宝刀で自分の腕を切り落とすぐらいの
覚悟が必要なのではないかと思います。


←前回記事へ

2011年2月7日(月)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ