第1351回
マイホームか?賃貸か?

マイホームか?賃貸か?
これは人生における最大の選択の一つです。

日本では高度経済成長期に、
持ち家の価値がどんどん上がりましたので、
「何しろ早く買った人が得をする」ということで、
マイホームブームが起こりました。

しかし、バブル崩壊後、不動産価格が低迷すると、
「マイホームも賃貸も最終的なコストは同じ」
というのが常識となり、マイホームを買わず、
あえて賃貸住宅暮らしを選択する「賃貸派」も
多くなりました。

一方の中国。
今までは不動産価格が右肩上がりで上がってきましたので、
日本の高度経済成長期と同じく、
中国の人たちはほぼ100%「マイホーム派」。

賃貸住宅に住んでいる人たちも、
好き好んで賃貸住宅に住んでいるわけではなくて、
マイホームを買うお金が無いから
賃貸住宅に住んでいるわけであって、
頭金さえ調達できればすぐにでも住宅ローンを組んで
マイホームを買いたい人がほどんとでした。

しかし、ここに来て、中国の不動産価格は下落に転じ、
今までのように「早く買えばその分得をする」
という雰囲気ではなくなってきました。
そして、不動産価格の下落と同時に、
賃貸住宅を借りる人が増加、
北京の賃貸住宅の家賃相場は上昇が始まっています。

中国でも日本と同じように
「賃貸派」が増加していくのでしょうか?

私はそうは思いません。
なぜなら、中国の人たちの心の中には、
信仰と呼んでも差し支えないぐらい強烈な
マイホームに対する渇望があると思われるからです。

中国人の友人と話していると、
彼らの賃貸住宅暮らしに対するイメージは、
漂流民、住宅難民、ノマド(遊牧民)、ジプシー、根無し草
といった言葉で表現されるような不安定なものであり、
自分の根拠地となるマイホームを持って
始めて落ち着いた生活ができる、
と考えている人が多いように思います。

更に、実際に中国では大家さんと借家人の関係においては
大家さんの立場が圧倒的に強く、
契約期間中にも関わらず家賃の大幅な値上げを要求されたり、
「家を人に売ることになったので
今月中に出て行ってくれ」と言われたりして、
文字通り、住宅難民のようになってしまう人もたくさんいます。

日本でもマイホームの購入は
「一国一城の主になる」などと言われ、
マイホームを持ってようやく一人前、
というような雰囲気もまだまだ残っているものと思われますが、
中国のマイホーム信仰はそれよりもずっと強烈です。

この中国の人たちのマイホーム信仰の強さから考えると、
不動産価格の下落が始まっても、
驚いて逃げ出すのはキャピタルゲイン狙いの投機家だけで、
バブルの部分がしぼんだ後も、
マイホームを買って実際に住む人たちによる需要は、
着実に増えていくのではないかと思います。





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2011年6月3日(金)

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