第1374回
中国共産党幹部は水戸黄門に学べ!

副将軍という身分を隠して日本全国を旅して回り、
私腹を肥やすために庶民を苦しめている
悪代官を懲らしめる水戸黄門。

今、中国共産党では、この水戸黄門のように、
幹部が直接庶民たちの中に入り込み、
庶民の意見を吸い上げる、
という活動が活発になってきています。

先日、中国共産党機関紙・人民日報は、
山西省の劉維佳副省長が同省の農村に、秘書を伴わず、
地元政府への事前連絡もなしに寝具を持参して突然訪れ、
村の農家に泊り込みで農民の意見をじっくりと聞いた、
という視察記録を紹介しました。

この視察の結果、劉副省長は
1.灌漑施設が壊れたままで、水利事業が機能していないこと、
2.丘陵地帯では小型の農機具が必要とされていること、
などが分かったのだそうです。
人民日報は「農村の第一線に深く入っていくことによって、
初めて農民の考えや希望を理解できる。
中国共産党幹部はこうした実地調査を多く行うべきだ」
とまとめています。

この他、「紅色キャンペーン」の
薄熙来党委書記率いる重慶市でも、
重慶市政府幹部が実際に庶民のところに出向いて、
彼らが何を必要としているのか、
何が足りないのかを調査する
「下訪(しゃーふぁん)」を義務付けており、
この2年間でのべ20万人の市政府幹部が
「下訪」をしたのだそうです。

中国には昔から、
庶民が不満に思ったことを政府に陳情する
「上訪(しゃんふぁん)」という制度がありました。
しかし、「不満があったら言いに来い、
という上から目線ではダメだ。
中国共産党幹部は自ら庶民のところに出向いて、
不満に思っていることがないか訊きに行くべきだ」
ということで、「下訪」という制度ができたのでしょう。

この中国共産党幹部による「下訪」、
ポイントは地元政府を通さずに、
突然庶民のところを訪れるという、
いわゆる「アポなし訪問」である点です。

水戸黄門も事前に藩を通して視察の申し入れをしていたら、
悪代官は副将軍に直訴しそうな危険人物を拘束し、
「お代官様のお陰で、私たちは毎日大変幸せに暮らしています」
という模範解答をする人間だけを用意するでしょう。
今の中国でもこれと同じことが
起こる可能性が大いにありますので、
「アポなし訪問」であることが重要なのです。

「こんな制度は、庶民の不満を和らげるための
中国共産党のパフォーマンスに過ぎない」
という意見もあるようですが、
たとえパフォーマンスだったとしても
やらないよりやった方がずっと良い、
というのが私の意見です。

「人民の中へ(ヴ・ナロード)」は
共産党の基本中の基本のはず。
しかし、中国共産党幹部がそれを忘れて、
エアコンが効いた快適な
人民政府の建物の中にこもって仕事をしていたことが、
こんにち、庶民の心が中国共産党から
大きく乖離してしまったことの
遠因になっているような気がします。

今後、中国共産党幹部が学ぶ「党校(だんしゃお)」では、
ぜひ「水戸黄門(しゅぇいふーほぁんめん)」
という課目を作って頂き、
毎週、中国語吹き替え版のドラマ・水戸黄門を見ながら、
本当の「下訪」とはどんなものなのかを
学んで頂ければと思います。





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2011年7月27日(水)

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