第1443回
テレビドラマにCM禁止令発令!

「答えはCMの後で...」

テレビ番組を見ていて突然こういうテロップが流れ、
その後長いCMを見せられて「イラッ!」ときた経験がある方も
多いのではないでしょうか。

クイズ番組の問題の後にCM。
ドラマの盛り上がったところでCM。
スポーツ中継の山場でCM。

こうしたCMは「山場CM」と呼ばれ、
視聴者をテレビの前から離れさせずCMを見てもらうための、
テレビ局のスポンサー企業に対する配慮だと思うのですが、
「イラッ!」ときた視聴者が流されたCMの会社に
敵意を抱くようなことになれば、
逆効果となってしまうこともあるのではないかと思います。

スポンサー企業のCM出稿料のおかげで、
タダでいろいろな番組が見られる、
ということは頭ではわかっているのですが、
テレビ番組を見ているときのCMは、
視聴者にとっては邪魔者以外のなにものでもないのです。

一方、先日、中国のテレビドラマを見ていて驚いたのは、
CMが流れている画面の右上に、
CMが終わるまでの秒数の表示が出ていたことです。

これでは「CMはあと○○秒で終わりますから、
その間、トイレに行ったり、家事をしたり、
他のことをしていてください」と言っているのと同じです。
視聴者にとってはありがたいサービスではありますが、
高いCM出稿料を払っているスポンサー企業としては、
テレビ局に損害賠償を請求したいところではないでしょうか。

そして、この秒数表示に飽きたらず、
中国のテレビを管轄する
国家機関・中国国家ラジオ映画テレビ総局は、
昨日、2012年1月1日からなんと、
テレビドラマにCMを挿入することを全面的に禁止する、
という新たな規定を実施しました。
実施の理由は「視聴者を満足させるため」とのことです。

このCM禁止令に対して、ネットでのアンケートでは
93%とほとんどの人が「支持する」と答えています。
視聴者にとってはCMは邪魔者なのですから、
「支持する」のは当たり前です。

一方のテレビ局はCM収入が激減し、
全国のテレビ局で合計200億元(2,400億円)を
超える損失が見込まれる、という試算もあります。
にも関わらず、あるテレビ局の幹部は
「テレビの視聴率を高め、テレビ局の価値を高めるものだ」
と今回の措置を評価しています。

いくら「視聴者を満足させるため」とはいえ、
スポンサー企業のCM出稿料で成り立っている
テレビのビジネスモデルを考えれば、
今回の措置は正気の沙汰ではありません。

しかし、中国共産党にとってのテレビは、
最も重要なプロパガンダの手段。
CM禁止令によって視聴率が上がり、
有効なプロパガンダの手段として使い続けられるならば、
テレビ局のCM収入減少など国家予算で補填すればよい、
と考えているのでしょう。

日本同様、ネットに押され気味の中国のテレビ。
しかし、中国共産党としては、
その内容を完全にコントロールしきれないネットに
国民が流れてしまうことは、好ましいことではありません。
今回のCM禁止令で視聴者は
ネットからテレビに戻ってきてくれるのか。
中国共産党中央宣伝部の今後のメディア戦略に注目です。


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2012年1月2日(月)

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