第1453回
「インフレ抑制」から「景気の下支え」へ

中国政府の経済政策は、
昨年の第4四半期(2011年10-12月)より、
「インフレ抑制」から
「景気の下支え」に軸足が移っています。

中国のCPI(消費者物価指数)上昇率は、
昨年7月には前年同月比6.5%と
3年ぶりの高水準を記録しましたが、
中国政府の金融引き締め政策の効果もあり、
11月には4.2%まで落ち着いてきました。

しかし一方で、経済成長率は
1-3月9.7%、4-6月9.5%、
7-9月9.1%、10-12月8.9%と下落してきており、
中国各地で企業の倒産、経営者の夜逃げ、労働者のストなど
国内情勢を不安定化させかねない事件が多発しています。

このため、今まで金融引き締め一本槍だった中国人民銀行は、
昨年11月30日、3年ぶりとなる預金準備率の引き下げを実施、
経済成長率が8%を下回るような事態になれば、
利下げが実施される可能性も予測されています。

そんな状況の中、中国のニュースサイト、
チャイナ・ビジネス・ニュースは、
中国政府は2012年、8,000億元(9兆6,000億円)の
財政赤字を計上する見通しである、と報じました。
故意に赤字予算を立てて公共投資を増やし、
景気を下支えするものと思われます。

中国の国家予算は
10兆元(120兆円)前後と言われていますので、
赤字額は予算全体の8%に上りそうです。
しかし、2011年1-11月の中国政府の収支は、
歳入が9兆7,000億元(116兆円)、
歳出が8兆9,000億元(107兆円)で、
差し引き8,000億元程度の黒字になっているとのことですので、
2011年に出た黒字を2012年に放出する、
というだけのことであるようです。

歳入が歳出の半分ぐらいしかない日本の国家予算と比べると、
プライマリーバランスが取れていてうらやましい限りですが、
それでも中国政府は今回は、
2008年に金融危機対策として行った4兆元(48兆円)のような
大規模な財政出動は行わない見込みです。
なぜなら、あの4兆元のおかげで、
中国は景気の極端な落ち込みを防ぐことはできましたが、
一方で、昨年中国政府をさんざん苦しめた
インフレや不動産バブルを引き起こした
1つの原因となったからです。

インフレになれば物価高で国民の不満が高まり
国内情勢が不安定化する。
一方で、景気が悪くなれば、企業の倒産や労働者のストで
これまた国内情勢が不安定化する。

どちらに振れても
国内情勢が不安定化することを悟った中国政府は、
今後は景気の振れ幅をできる限り小さくするべく、
政策もカネも様子を見ながら小出し小出しにする、
超安全運転の経済運営をしていくことが予想されます。





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2012年1月25日(水)

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