第1462回
中国の人たちが汚職幹部を告発しないワケ

中国国家腐敗予防局によれば、
昨年、中国で摘発された汚職官僚は14万2893人で、
2年前、2009年の10万6626人から34%も増加しました。
その中には前鉄道大臣・劉志軍氏、
前吉林省常務副省長・田学仁氏、
前山東省副省長・黄勝氏などの大物も含まれています。

回収された不正蓄財の額は
84億4000万元(1013億円)とのことですので、
摘発された14万2893人で割ると、
一人当たり5.9万元(71万円)。
当社に来たような数千元(数万円)をせびる
木っ端役人は捕まっていなさそうですので、
昨年捕まった14万人は
巨大な氷山のほんの一角であると思われます。

「中国共産党の高級幹部は
叩けばほこりが出てくる人がほとんどだ。
その中で捕まるのは、権力闘争に負けた人だ」
これは中国では誰でもが知っている常識です。

前回ご紹介した白氏の家にどろぼうに入った警備員が、
白氏が違法蓄財をしていることを知っていたように、
中国では多くの人が高級幹部の汚職の事実を知っています。

しかし、一般庶民がそうした汚職幹部を告発しないのは、
1つは、権力者を告発すると、
「告発を揉み消された上で、
自分の身に危険が及ぶかもしれない」から、
もう1つは、正義の告発をしても
「自分には一銭の得にもならない」からです。

特に、中国では田舎に行けば行くほど、
役人も警察官も企業経営者もヤクザもみんなグルですので、
ゾンビに襲われて警察に助けを求めにいくと、
逆にゾンビの警察官に襲われる、
という事態に陥ることが多いです。
そんな田舎では、幹部たちの汚職を知っていても、
知らないフリをして生きるのが上手な生き方なのです。

そんな中国の一般庶民の気持ちを慮って、
汚職の摘発に力を入れている重慶市では、
実名での告発を市民に呼びかけ、
告発者の身の安全は政府が保証する制度を導入しました。
また、告発により刑事罰に至った重大事件に対しては、
告発者に事件関連金額の3-5%の報奨金を
提供することにしました。
さすがは今年の党大会で常務委員会入りを目指す
薄熙来党委書記、やることが斬新です。

中国共産党の一党独裁体制を
根底から揺るがしかねない汚職幹部。
中国共産党が国民から愛想を尽かされないためには、
一般庶民の力を借りて汚職幹部を徹底的に取り締まり、
「身内に甘い」というイメージを
払拭する必要があるのではないかと思います。





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2012年2月15日(水)

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