第1502回
一人っ子政策の堅持を決断した中国

一人っ子政策。

これは1979年に始まった中国の人口抑制政策で、
33年が経過した現在でもまだ続行中です。
現在では夫婦が共に一人っ子である場合、
及び、農村戸籍の夫婦の第1子が女児であった場合は、
第2子の出産を認めるよう規制が緩和されていますが、
それでもこの一人っ子政策の人口抑制効果は絶大で、
中国では2015年前後から15-64歳の労働力人口が
減少に転じることが予測されています。

一方で中国の60歳以上の高齢者人口は、
毎年800万人増加しており、
2015年には2億人を突破することが予想されています。
付加価値を生み出す労働力人口が減少に転じ、
養わなければならない高齢者人口は
毎年800万人も増えるとなると、
高齢者を養うための原資が足りなくなるのは
火を見るより明らかです。
このため中国では、一人っ子政策を廃止して、
若年層の人口を増加させるべきなのではないか、
という議論が常になされてきました。

しかし、先日、中国国務院が発表した
国家人口発展第12次5カ年計画(2011-2015年)では、
一人っ子政策を国策として堅持し、
2015年の総人口を13億9000万人以下に抑える、
という方針が打ち出されました。

世界最大の人口を擁する中国の人口増加は、
限りある地球の資源や食糧の大量消費につながります。
中国は自国のことだけを考えれば、
一人っ子政策を廃止して、労働力人口を再び増加に転じさせ、
高齢化社会を乗り切るべきですが、
そこをあえて一人っ子政策を堅持するいばらの道を選びました。
私個人的にはこれは、中国の世界に対する
最大の貢献なのではないかと思っています。

では、労働力人口が減少に転じる中で、
どうやって年間800万人も増加する高齢者を養っていくのか?

その答えは、
「労働者人口1人当たりが生み出す付加価値を上げる」
です。

中国の2010年の時点での高齢者扶養比率、
すなわち労働力人口に対する高齢者人口の比率は19%で、
労働力人口5人で高齢者1人を養っている状態でした。
しかし、2020年には労働力人口3人で高齢者1人を、
2030年には労働力人口2.5人で高齢者1人を
養うことになることが予測されています。

少ない労働力人口で増加する高齢者を養っていくためには、
1人1人の労働力人口がより高い
付加価値を生み出す必要があります。

一人っ子政策の堅持を決断した中国にとって、
自国産業の高付加価値化は、国の将来を左右する、
死活的に重要な課題なのです。





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2012年5月18日(金)

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