第1542回
最初の一歩は「日中の相互理解」

中国という国は、興味が尽きない国です。

16年間住んでいても、まだまだ新しい発見があります。
「中国ビジネスのススメ」を1500回以上続けてこられたのも、
この国がまったくネタに困らない国であるがゆえです。

16年間住んで、1500回以上コラムを書いて、
それでもまだまだ中国や中国の人たちのことを
完全に理解できたとは思っていない私から見ると、
今の多くの日本人の中国理解は、
あまりにも表層的で断片的であると言わざるを得ません。
中国や中国の人たちのほんの一部を見たり聞いたりして、
それが全てであるかのように認識してしまうのです。

これはマスコミの報道の影響も大きいと思われます。
マスコミの報道は「ニュース性」という
バイアスがかかっていますので、
衝撃的な事件や悪いことばかりが報道されることになります。
中国の群衆が日本大使館に向かって
投石するのはニュースになりますが、
同じ投石でも日本大使館で
「日中友好石投げ大会」などという大会が開催されても、
それは報道されることは多分ないでしょう。

マスコミの方々も商売ですので、
仕方がないと言えば仕方がないのですが、
実際に中国で起こっていることが、
良いこと9:悪いこと1の割合でも、
日本で報道される中国関係のニュースが
良いこと1:悪いこと9という比率であれば、
日本人が中国や中国の人たちを
嫌いになるのも無理はありません。

しかし、マスコミの影響を差し引いたとしても、
一度も中国に来たことがなく、
一度も中国人と話をしたことがない日本人が、
テレビのニュースを鵜呑みにして
「嫌中」になるのはどうかと思います。
これは中国の「反日」の人にも同じことが言えます。
まずは、自分の目で見て、
実際に話してみたらどうでしょうか。
それでも、やっぱり中国も中国人も嫌いだ、
ということであれば、
それはそれで一つの立派な意見だと思います。

私は盲目的な「日中友好」ではなくて、
まずは「日中の相互理解」が重要であると考え、
東京大学と北京大学の学生が2週間にわたって相互訪問し、
英語を使って日中間の問題を徹底的に議論する
「京論壇」(http://jingforum.org/jp/)や、
中国の高校生を日本に招待して、
企業訪問やホームステイを通じて本当の日本の姿を見てもらう
中国日本商会の「走近日企・感受日本」
http://www.cjcci.biz/public_html/topics/120426.htm
といった活動を、微力ながら応援してきました。
しかし現状、「日中の相互理解」が進んでいるとは
まだまだ言えない状況にあります。

より多くの日本人と中国人に
お互いの国の本当の姿を理解してもらう。
これが将来、より成熟した日中関係を築くための
第一歩となるのではないでしょうか。


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2012年8月22日(水)

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