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13. 社長の初仕事:中国ビジネスの洗礼

私の社長としての初仕事は、
「中国フード市場の中長期的変遷を見越した企業の戦略づくり!」
といきたかったのですが、実は、パソコンの購入でした。
しかも、私自ら成都の秋葉原(パソコン市場)へくりだし、丸一日を使うという、
なんとも非効率な時間の使い方をしたのです。
そして、この日が私に対する中国ビジネスの洗礼となったのです。

その日はこんな風にはじまりました・・・。

当時私のまわりには何もありませんでした。
いや、ホントになにもなかったのです。オフィスもなければ机もない。
自分が日本から持ってきたパソコン一台とあとは紙と鉛筆ぐらいのものでした。
ただ幸運なことに成都には、グループの既存事業がありましたので、
そこの机を1つ間借りすることにしました。
そして今は北京にいる荒木さんにお願いして、
私をサポートしてくれるスタッフを一時的に借りることにしました。

そのスタッフがオフィスに初出勤するや否や、
「あの、社長。仕事するのにパソコンが必要なんですが。」
「あっ、パソコンね。じゃ、1台買っといて。」
「えっ、私が買うんですか?」
「何いってんの?あたりまえでしょ。
どこの世界に社長がわざわざパソコンを買いに行く会社があるの。」
「でも、中国ではあまり・・・。」
「いや、中国ではどうのこうの言われても、
私がパソコンを買いにいくことに経営上の意味はないでしょ。」
「いや、ありますよ。」

パソコン一台購入するのに、10分も議論を続けたのですが、
どうにも引きさがらないスタッフの姿勢に折れて、
「まっ、いいや。何でも経験でしょ。」
と自分に言い聞かせパソコン市場に向かいました。

パソコン市場につくと、そのスタッフは、
いわゆるパソコンの部品を販売するパーツ屋を懸命に回り始めました。
パソコンのスペックと価格を調べに調べ、10軒も20軒も店を回り続ける間、
私はただひたすらついて回るだけでした。
「こんなことに何の意味があるの?」と思いながら。

こうして市場調査を2・3時間続け最も安い店を探り当て、私が、
「いや、よかったよ。一番安い価格もわかったことだし、さっ、オフィスに帰ろうか。」
と言うと、
「社長何言ってるんですか、これからですよ、勝負は。」
と逆に注意を受けてしまいました。

先ほど狙いをつけた店に腰を落ち着けると、
次は組上げ完成価格の総額交渉にはいりました。
30分も交渉をすると、ある程度の価格に落ち着いてきましたので、そこで私は
「いや、そんなに安くなるとは思わなかった。じゃ、お金を払って帰ろうよ。」
と持ってきた札束を出しながら言うと、またもや、
「まだです。」
とキッと睨まれながらそのお札を突き返されてしまう始末です。

さすがに頭にきた私が、
「ねえ君ね、僕らはパソコンを買いにきたんでしょ。
もう最終価格が決まったらなら、お金を払って帰るべきじゃないの?
これ以上なにを交渉する必要があるの?」
と言うと、そのスタッフは、
「ほんとにわかってませんね。中国ではパソコンを買うときものすごくよく騙されるんです。
たとえパーツを決めても、
組み立てる時ニセモノのパーツや中古品のパーツを入れられることもあるし、
しかも、製品が届く前にお金を払ってしまったら、
もし問題が発生したときに、店側は我々を相手にもしてくれませんよ。」
と言うではないですか。

そして、彼女がそのあとショップ側に要求した内容を聞いて、
私は天井を見上げて唸っていました。
「じゃ、すべてのパーツをここに持ってきて。
それを私が確認しますから(デジカメで写真も撮る)。
そして、その未開封のパーツを明日の午前10時に私たちのオフィスにもってきて、
そこで初めて開封して、目の前で組み立ててちょうだい。」

この日の経験で私は、明確に日本と異なることを意識しました。
パソコン1台安心して買えないのかここは。
あ〜、電話一本でパソコンが買える日本となんと違うことか。

ゆっくりと一歩目を歩みはじめたのでした。


2007年6月18日(月) <<前へ  次へ>>