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186.成都で起きたデモの傍らで

日本で相当報道されたようですので皆さんご存知かと思いますが、
一昨日10月16日に成都でデモが行われて、
地元の日系企業であるイトーヨーカドーや伊勢丹が
壊されたりといった被害がでました。

私も、ヨーカドーの真横と伊勢丹の中に店を構えるものとして
心配で市の中心に出向き様子を見ていました。

そもそも、今回のデモは
成都に住む我々には事前にわかっていました。
重慶日本領事館や地元日系企業の情報収集の努力のおかげで、
当日の朝までにメールで情報が来ていました。
そこにはこんな風に書かれていました。
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明日の土曜日、成都で反日デモが行われる見通しですので、
以下のとおりご連絡いたします。
・日時 10月16日(土) 14:00〜
・場所:成都市中心部(春照路(伊藤洋貨堂前)〜天府広場)
・実施者・組織:反日運動を行う学生の模様
(背景の組織など詳細不明)
(公安に対して日ごろから反日デモの申請をする団体。
普段は公安は認めないが今回は認めた)
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実際、街でデモをしている人たちは学生のようでした。
若い、いや正確には幼い顔をした学生もたくさんいました。

見るに8割がたの学生はそのデモの意味をよくわからず、
グループリーダーの言うとおりに声をだしていました。
「いいか、ここでxxxと大きく3回叫んでくれ。
さあ、いまだ・・・。」

そしてまわりの市民も面白おかしく
その“お祭り”に嬉々として参加していました。

デモをしている、そして参加している人たちに
強い思想や信念などない様子でした。

中国国内でも
「中国には人権問題をはじめより深刻な問題が多々あるのに、
そういった国内問題にはデモはいっさい行われず、
こういった国外の問題についてだけデモが行われるのはおかしい。」
という意見を表明する思想家や作家たちもいるようです。
(ネット上のこうした意見はすぐに削除されたようですが。)

私は、韓国人として日本に生まれ、
子供のころは「日本人ではない。」、
韓国留学時代は「俺は韓国では韓国人として扱われない。」
と悩んだ時期もあり、
愛国心とか国家への帰属とかいう属性の問題には興味がないし、
きわめて政治問題について関心がないので、
こういったことがなければこういうことを考えません。
ただ・・・。

「中国の政治問題のスケープゴートに日中関係が利用されて、
市民レベルでの友好関係が崩れるのはとても残念だ。」
と思っています。

幼い顔をした女の子の学生が、
チームリーダーの指示に注意を払う真剣な横顔を見て、
悲しく複雑な気持ちで街をあとにしました。


2010年10月18日(月)

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