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31.命の値段、5万元なり

僕が中国に来た当初、何人かが「中国人の命は安い」
というようなことを言っていたのを聞いたことがあります。
純粋だった僕は、何て不謹慎な事を、等と思ったりしていましたが、
以前自分の命の値段を知る機会がありました。

中国で車に乗り始めてから、毎年自動車保険に加入してきました。
日本だと自賠責保険の他に、対物や対人等の保険への加入が多いでしょうが、
こちらでは自分の車に乗る人に保険を掛けることが多いようです。

できるだけ保険を使うことは避けたいですが、
もしものことがあった場合にと思い、僕もドライバー用の保険に入りました。
が、保険金額を聞いて耳を疑いました。
死亡・・・最高5万元(75万円強)
僕が交通事故で死んでも、これ以上の保険金を掛けることができません。
どうやらこの保険では、所有している車種によって保険額が異なるようなのです。
僕たちは、50万円くらいの7人乗りのミニバンを使用しています。
コーヒー豆や設備等を運ぶのにも非常に便利ですし、ぼこぼこの山道も結構走ってくれ、
ベンツ等の高級車よりも、産地ではよっぽど使い勝手が良いのです。
安い車に乗る人 = 低い生活水準 = 安い命の価値
というように保険額が設定されているのでしょうか。
もしくは、
安い車 = 故障や不備が多い = 事故の発生率が高い
ということが前提にあるのかもしれません。
ちなみにこの保険額、今年から倍の10万元に増え、
僕の命の値段もインフレの恩恵を受けることができたようです。

この自動車保険、一度だけ使おうとしたことがあります。
昆明市内で渋滞の中、自転車専用道路から割り込んできた車を避けずにいたら、
コツンと接触しました。
大したことないと思い僕が車をバックさせたため、相手車両をギギギと刻んでしまい、
チンピラみたいなおっさんがすごい剣幕で飛び出してきました。
僕もその時は自分が悪いとは全く思っていなかったので、
路上から警察署までずっと言い合いを続けていました。
その時に保険会社に処理させようとしたのですが、担当者がすぐに来られない、
保険を適用するには車検を通す必要があり、一ヶ月車を預けなければならず、
その保管料が一日30元、車検代約1000元等々、
できるだけ保険を使わせないような仕掛けが用意されていました。
通常は小さな事故の場合は示談で済ませることが多く、
保険会社もいちいち付き合っていられない、という感じなのでしょう。

僕はすぐにでも駆けつけなければならない仕事があり、気持ちは焦るばかり、
片やチンピラおじさんは有り余る時間を武器に、梃子でも動かない様子です。
結局、僕が根負けしてしまったのですが、
この中国人の悠久の時間間隔にどのように対処していくかが、
僕の大きなテーマのひとつとなっています。


2007年10月12日 <<前へ  次へ>>