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24. 思い出話 V

昔テレビで良く見かけたヨーロッパやアメリカなどのホームパーティ。
まさか自分がそこの料理を担当するとは夢にも想っていませんでした。

当日町に在る魚屋さんを何件か廻り魚を仕入れ、
お米や野菜その他の材料を集め会場となる大きな一軒家に案内されました。
造りはまさに昔テレビで見ていたヨーロッパの雰囲気ある3階建てのお家。
アンティークの家具など所狭しと並べられていて見事です。
今日の私の仕事場となるキッチンは2階に有り、パーティー会場は3階。
一人で仕事するにはちょうど良い大きさのキッチンで問題ありません。
パーティーの参加者は10〜12人と聞いていたので、逆算し時間にはまだ余裕がある。
でもお寿司だけじゃつまらないと思い、天ぷらやかき揚げも作ろうと材料も揃えました。
ここまで来たら今日の俺は日本料理人と自分に言い聞かせ、
ゲスト全員に喜んで食べてもらってパーティーを成功させようと意気揚々です。

そして仕込みを始めて夕方に差し掛かった頃突然依頼者の伊女性が、
「今日のパーティーの人数が変更で、17人に増えたけど大丈夫?」
私「まあ、それ位は想定内です、問題ありません。」
焦った本心を隠しながら言いました。

pm19:00になり続々とゲストが集まり、
主役である結婚記念日のご夫妻に挨拶をしてパーティーが始まりました。
最初は食前酒を飲みながらお刺身をつまんで頂きます。
鯛、平目、ブリ、マグロ、ホタテなど。
キッチンでは全て一人でやっているので、段取りが命。
すかさずお寿司を握り始め、綺麗でモダンなイタリアのお皿に盛り込んでいく。
すると主役の御婦人があなたもワインをどうぞとグラスを渡されました。
地元で獲れる葡萄を使ったワイン、ロエロ・アルネイズ ブルーノジャコーザ。
町の外れに在るカンティーナに何度か行き見学させて頂いたし、
作り手の方にもお会いしているし、最も私の大好きな地元を代表するワイン。
ワイン片手に今度は天ぷらを揚げていく。

日本でケータリングの仕事は経験ありませんでしたが、
イタリアの私が働いた有名リストランテではかなりの頻度でケータリングをします。
なのでその経験も満更悪くなかった。

最後のかき揚げを揚げ終わるとパーティー会場の3階へ呼ばれ皆さんへ挨拶。
皆さんお酒も入り料理も美味しいと言ってくれご機嫌の様子。
料理とワインを囲みながら話も盛り上がり、
皆で写真を撮ろうと誰かが提案して、私もその中に入れてもらい皆で記念撮影。
その場所、空間、雰囲気、人全てが
あの幼き頃見たテレビのホームパーティそのものでした。
その中の登場人物として自分が存在しているのが何より嬉しかったです。
(その時の写真を皆さんにお見せ出来ないのが残念です。)


2008年1月24日 <<前へ  次へ>>