そこで、事業だろうと、ただの金儲けだろうと、あるいは、個人的な成果をきそう発明発見や芸術活動にしろ、一つの仕事を成功させようと思えば、他に使う時間は全部、犠牲にしても、全精力を集中しなければならない。さきに、「ベッドの中の時間は節約できない」と書いたが、「寝食」の中の「寝」の部分も忘れなければならないのだから、何だろうと遮二無二切り詰めなければならないのである。また私は「人は食べるために生きている」という哲学の信奉者であるから、おいしいものを食べるためにかなりの時間をさくことにしているが、その時間もカットしてしまわなければならないのである。
「寝食を忘れて」という表現はむろん、もののたとえであるが、寝と食は生活の中の最も重要な部分であるから、それを無視するくらい時間が不足するようにならなければ、仕事は大成しないのである。したがって一日は二十四時間あって、寝るのに何時間、食べるのに何時間と、物理的な時間を並べていっても仕方がない。いざとなったら、時間割りは全部パアにして、一つ事に集中し、奇人扱いされようと、異端視されようと、屁とも思わないようでなければ、とても力一杯生きたことにならないのである。
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