好きなことを選んだら怠けられない
しかし、好悪の感情の混入するものでも、それを本職にできるものとできないものがあり、また本職にできるものでも、本職にした途端に、楽しみから苦痛に変質するものもある。
たとえば、恋愛やセックスはいくら人の望むものであっても、それを職業とすることはできないし、したがってそのチャンピオンになっても世間から褒められることではない。せいぜいその豊富な体験を芸術作品か、学術論文にでも生かすくらいのことであるが、これとて体験の問題よりは表現力の問題であるから、体験だけでは何の役にも立たない。
ゴルフやテニスになると、挑戦することに楽しみがある競技であるが、シロウトがプロになって生活がかかってくると、楽しみばかりとはいえなくなる。ただ、たとえ苦痛が伴うとしても、好きなことを職業として選ぶのだから、成果があがるかどうかは別としても、練習したり挑戦したりすることに我を忘れることは多い。嫌でゴルフや野球やボクシングのプロになる人はいないから、すべてプロフェッショナルな職業を選ぶ人は、人生を楽しく生きる術を心得た人といってよいであろう。あとはプロとしての才能があるかどうか、またプロとして成功するための要領を得ているかどうかであるから、どっちから見ても自分の好きなことを職業に選んだ以上、怠けてはおられないのである。
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