自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第168回
店構えでは引けてしまうが・・・、「兼定」

私はあまり知られていない店を取り上げることをしていません。
店の宣伝にだけなってしまうことを避け、
人気店メーカーとして君臨したいとも考えていないからです。
六本木にある鮨屋の「兼定」は、
あまりガイド本に取り上げられておらず、
住所や電話番号を公開されていないことになっていますが、
「ザガット」では数年前からデータが掲載されていますので
取り上げることにしました。

旧防衛庁近く、六本木駅から徒歩数分の
まったく街場の鮨屋の店構えの店です。
予約して初めて訪れる方は、
ドアを開けるのを一瞬ためらうでしょう。
いかにも住宅街のデリバリーをしている鮨屋、といった
豪華ではない小さな店。
とても六本木にある、高額店に準じるお値段の、
「お任せ」のみの鮨屋とは思えないのです。
私も数年前、初めて訪れた時は先入観とのあまりのギャップに
一瞬、入店を躊躇したくらいです。
店内は8席ほどでカウンターのみ。
つけ場では、2名の職人が対応しています。
その他女性スタッフは2名。客数の割にスタッフは多い。

客層は意外にもスーツ姿だけでなく、
カジュアルな服装の人も多く、
常連に支えられていることが推定できます。
主人を含め職人はどちらかというと静か、
客にプレッシャーがかかる緊張感がありませんので、
一見でも落ち着く雰囲気であります。
そしてビールはエビスのみ。
拘りを感じますが、
夏にはツマミとして「枝豆」からスタートするのは
ちょっと拍子抜けしてしまいます。

握りはすべて煮切りやツメが塗られていています。
ネタは一仕事されているものがほとんどで、
私のイメージする「江戸前」です。
蛸や蛤、アナゴなどへの仕事振りも充分満足できるもので、
食材の質も高いと推定できます。
ツマミもただ刺身を出してくるだけでなく、
手をかけたものも用意しているので、酒飲みには有難い。
夏の白身は「星鰈」を用意している場合もあります。
鮪も他の高額店のレベルであり遜色ありません。

大トロは炙りなので、好みの分かれるところかもしれませんが、
ツマミから握りまで手をかけたネタ、
一見客でも居心地は悪くない雰囲気で、
お酒を飲んでの2時間に一人2万円弱。
六本木の有名店「奈可久」に比べて豪華さはなく、
店の造りはかなり違いますが、
内容はよりまっとうな鮨屋と考えます。


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