自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第183回
店構えの割にCP悪過ぎ「ピアット スズキ」

熟年の一人客も見かける大人の社交場と
「東京最高のレストラン」が高評価をつけた
麻布十番のイタリアン。
近所の「ヴィーノ ヒラタ」を
独立したシェフの店との触れ込みです。

入り口付近にはバーカウンターを兼ねたようなセラーがあり、
奥に厨房とカウンター、それにテーブル席で
20名くらいのキャパでしょうか。
狭いフロアに無理に詰め込んだからか、
テーブル間の距離はあまりに接近しています。
同じテーブルの同伴者と、
隣のテーブルの客との距離が変わらないという笑える配置。
誰とでも親密感を築けるように狙ったのでしょうか。

驚いたのは客層です。
本にあるような、
お金に余裕のありそうな熟年層はどこにも見当たりません。
我々も含めて。
取材時から一気に客層に変化が出たのでしょうか。

料理はアラカルトだけで「高過ぎる」の一言。
前菜が2〜2400円、パスタも2千円以上、
そしてメインはカツレツ、オーソブッコが3200円、
Tボーン4800円以上、鴨にいたっては5400円と
出身の「ヴィーノ」でなく「クチーナ ヒラタ」に匹敵する
強気の値付けで、何処にでもある料理、選択肢も少ないのです。
一皿のポーションが大きければ許せますが、これがまた小さい。
Tボーンもこの値段なら「アロマクラシコ」と変わらず、
量・質・焼き方とすべてに劣っておりました。

大谷浩巳氏はメニュー外の物を頼める柔軟性を評価していました。
試しに、フレッシュポリチーニのタリアテッレを
4人分頼みましたが、一人当たり3850円。高過ぎです。
これだけ請求できるなら、
誰でも柔軟性をだして特注を受けますよ。

我々が前菜、プリモ、セコンドと3皿を食べ終わるときには
周りの客は既に2回転以上していました。
つまりこの店は、前菜とパスタに適当なグラスワインを飲んで
そそくさと帰るような店のようです。

お勧めの前菜、カジキもあまりの量の少なさに驚いただけの
味はいたって凡庸。
この普通のレベルの前菜、パスタ、メインと
3皿頼むだけで1万円。
ワインを飲まなくてもドルチェやエスプレッソだけで
〆て1万5千円近くになりますから恐ろしいものです。

ワインも高い。
なぜかノンヴィンのシャンパーニュ、
ロデレールが1万円を超える価格にただ驚くばかり。
イタリアの有名な白ワイン、ガヤ&レイが2万5千円と
最近のイタリアンの店の値付けからみて2割高く、
ロッシバスのグラスが2200円もやり過ぎです。
3杯売れば仕入れ値を回収出来てしまいます。
ワインリストも見るべきものがありません。
たいしたワインを飲まなくても、
一人2万円をかるく超えてしまうのが恐い。

大谷氏が言うように、
高くてもそれに、見合う雰囲気、客層、料理なら
文句はでないでしょうが、
料理とワインの価格は「リストランテ」以上で、
「ヴィーノ」(ワインバー)の雰囲気と味。
量も少なく、私は何故にこの店が流行っているのか、
まったく理解できません。
マスコミのバックアップが効きすぎているようですが、
高い店で食後の満足感はまったくありません。


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