自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第240回
鮨屋のタブーに挑戦 その6
他店はなぜ「次郎」が日本一だという風評を黙認するのか

ロブションもフェランも絶賛する「すきやばし 次郎」。
しかし、彼らは山本益博氏に連れて行かれた以外、
他の多くの鮨屋を試した事があるのでしょうか。
しかしこの世界的に有名なシェフの
バックアップも効いているのでしょう、
「日本一」、「稀代の鮨職人」、「天才」といった文字が
マスコミに躍っています。
恐らくこの店を真っ向批判したものは
拙著以外にないのではないでしょう。

里見真三氏を責めるわけではありませんが、
文藝春秋社の「旬を握る」が
小野二郎氏の神格化のトリガーになったのではないかと考えます。
全編一般読者には独善、激しい思い込み、勘違いと
小野氏の性格を疑問視するような構成や語り口ですが、
かえってカリスマ性を高めてしまったようです。
それ以降も「次郎」を絶賛する本が次々出版されています。

しかし、拙著の出版後、
出版社などへ「次郎」の記述に賛同していただくお便りなどが
いくつか来ました。
一般読者のほかに、マスコミ関係者の方、
そして何と鮨屋の主人からもあったそうです。
「東京いい店うまい店」では最高の5つ星。
しかし「東京最高のレストラン」では
「すきやばし 次郎」を上回る10点満点が
「次郎よこはま店」と「ほかけ」と2店あります。
少なくともこの本では日本一と評価していません。

条件がほぼ同じ上での評価、
たとえば水泳などの競技であるならばタイムという絶対評価で、
北島選手を日本一や世界一と評してもいいかもしれませんが、
条件が異なる、つまり土俵が違う可能性がある場合は
気軽に祭り上げるのはいかがなものか。
すべての鮨屋を制覇している人はいないでしょうし。
常連、一見でも扱いは違うでしょうし、
まして食べ手のプロと自称している執筆陣は、
他店の方を高く評価しています。
そのような立場なのに、「日本一」、「天才」と祭り上げられ、
その手の褒め殺しのような本の出版に同意し、
サイン会まで出席してしまう小野氏に
謙虚さというものを求めるのは無理なようです。

しかし、問題は同業他店にあるとも考えます。
正面から「何が『次郎が日本一だ、天才だ』。
俺の店へ来て食べてみやがれ。」
とマスコミに見栄をきるくらいの
気概のある鮨職人はいないのでしょうか。
長いもの(料理評論家、フード・レストランジャーナリスト)に
巻かれろ、的な日本人の悪い習性を打破し、
色々議論を戦わせることが、開かれた鮨屋業界を造る、
といったら大袈裟でしょうね。


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