自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第329回
グランド セントラル オイスター バー&レストラン 1

オープン当初から予約が何ヶ月もとれない、
と一気にブレイクした
牡蠣をメインとした大きな駅前食堂です。
単なるオイスターバーだと思うのですが、
NYのグランド セントラル駅という立地が当たったのか、
その本店と提携した、
「カプリチョーザ」など多店舗展開している
WDIという日本の会社が経営しています。
オープン前に
それほどマスコミに露出していなかったと記憶しているのですが、
親会社の顧客名簿なり営業活動が功を奏したのか、
姉妹店「イル ムリーノ」の
オープン当初と同じく盛況のようですが、いつまで続くことか。
最近は勢いが落ちてきたと
ロウ・バーのスタッフも言っておりました。

この店は多店舗展開している会社のノウハウが
随所にあらわれています。
キャップを被った厨房スタッフは、
いかにもアルバイト的でダイニング系によく見られる雰囲気。
技術云々を彼らに求めてはいけないということが、
入店と同時にわかります。

店名を「シナガワ オイスター バー・・・」
とするべきだといった野暮はいいませんが、
提携店と同じく駅近くに店を出したのは正解です。
この手の店の勝負はいかに「人通りの多い地」に出店できるかに
かかっているからです。
ロンドンでもハロッズの食品フロアや
国際空港にオイスターバーを見かけます。
つまり、買い物ついでや旅行の乗り継ぎの待ち時間に
ちょっと立ち寄る店といったもの。
じっくり味わう店ではなく、
せわしなく訪れる客に、簡易な調理で提供できるオイスターなど
シーフード料理を出すのがこの手の店のコンセプトです。

当然、調理などクオリティーは低くても許される店なので、
わざわざ数ヶ月も先の予約をとらなければならないほどの
盛況ぶりは、NYの本店でもうれしい誤算と考えます。
観光客など人の流れを期待できない
飲食店の激戦区である西麻布近辺、
例えば「マイモン」をはじめいくつかのオイスターバーが
集客に苦労しているのがその証左といえます。

客席は赤白のギンガムチェックのクロスのかかった
テーブルとカウンター。
少人数でカウンターを狙うならば、
昼時や夕方では割と簡単に入店できるようです。
すべての席を予約対象にしていないのでしょう。
予約を調整しているようなものですから、
「予約困難」な噂が話題になり、また客が殺到する、
といった高度な営業戦略を感じます。
店内にはトランクや旅行バッグなどを置いておくスペースもあり、
旅行客も来店しているようです。

オイスターバーと銘打っているのに、
なぜか昼時に設定されているランチメニューに生牡蠣はありません。
牡蠣フライのサンド、牡蠣フライ、そしてなぜかパスタ、
とランチ客のほとんどは
このオイスターバーの唯一のウリである
種類豊富な「ロウ・オイスター」を食べないのですから不思議です。
当然その時間帯のロウ・バー内は、
滅多にないアラカルト注文に対応するだけですから暇なものです。
料理はデザートを除いても70種を超えています。
経験豊富と思えない厨房スタッフたちが、
これだけの種類の料理をたとえレシピが整っているとしても、
高クオリティーで出せるでしょうか。
このシステムで料理のレベルを期待するのは、
最初から諦めが必要です。


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2004年6月8日(火)

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